任意売却とは?仕組みをプロがわかりやすく解説
任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなったときに、競売にかけられる前に不動産を売る方法です。何も対策をしないまま住宅ローンを滞納すると、自宅は競売にかけられてしまいます。しかし、ローンを借りている金融機関と交渉すれば、競売を回避し、自分の意思で不動産を売却できます。これが「任意売却」です。
この記事では、任意売却の仕組みをわかりやすくお伝えします。

- この記事の監修者
- 富永 順三 任意売却119番・代表コンサルタント
- 宅地建物取引士
20年の経験を持つ専門家が、解決策を無料でご提案します。
目次
任意売却とは?

任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった際、債権者である金融機関と話し合いを行い、裁判所による競売手続きが始まる前に自宅を売却する方法です。この手段が選ばれる主なケースは、収入が減少して住宅ローンを払えない場合や、離婚や病気といった事情により家を手放さざるを得なくなった場合などです。通常の不動産売却では、売却時に住宅ローンを完済して抵当権を抹消することが必須ですが、任意売却なら、残りのローン残債があっても金融機関の合意を得られれば売却できます。
抵当権とは
抵当権とは、家を買うための住宅ローンを銀行から借り入れる際、その買った家や土地を「担保(たんぽ)」として銀行が押さえる権利のことです。もし住宅ローンを払えなくなった場合、銀行はこの抵当権を使って、あなたの家を競売(けいばい)にかけて売ることができます。売ったお金をローンの返済に充てるのです。
そのため、住宅ローンが残っている家を売る際には、必ず残りのローンをすべて返し終わって、この抵当権を消さなければなりません。抵当権がついたままだと、新しい買い手にとって「いつ銀行に家を取られてしまうか分からない」というリスクがあるため、売買の取引が成立しないからです。
任意売却と抵当権の関係
金融機関が設定した抵当権を抹消できるのは、住宅ローンを全額返済できた時のみです。そのため、通常の方法でご自宅を売却する際には、買主から受け取った売却代金でローンを全額返済し、抵当権を抹消するのが基本的な流れです。売却価格がローン残高を上回る、いわゆるアンダーローンの状態であれば、この方法で問題なく借金は清算されます。
しかし、売却価格がローンの残額を下回るオーバーローンの状態では、売却代金だけでローンを全額返済できないため、不足分を現金で補わなければ、抵当権を抹消できません。たとえば、売却価格が2,000万円で、ローン残高が2,500万円なら、抵当権を抹消するために不足する500万円を別途支払う必要があります。
このような状況で検討されるのが任意売却です。任意売却は、売却後もローンが残る状態にもかかわらず、金融機関の同意を得て抵当権を抹消できる特別な売却方法なのです。
任意売却のしくみ
住宅ローンの返済が止まって一番困るのはローンを貸した金融機関です。預金者から預かったお金の回収が怪しくなるばかりではなく、督促や不動産の差し押さえ、競売にかかる費用負担といった業務も増えます。そんな手間暇をかけて担保不動産を競売で換金しても、相場の5~7割程度にしかなりません。つまり、競売は債権者からすれば労多くして実りの少ない手段です。できるだけ「早く」「多く」「費用を掛けず」貸金を回収したい。債権者が任意売却に応じる背景がここにあります。
住宅ローンを融資した債権者からすれば、できるだけ高く担保物件を売却し、より多くの債権回収を図りたいのです。それゆえ高く売りたい点において、債務者と債権者の利害は一致しています。そこで、売主の「任意」のもと、仲介役となる不動産会社を通じて債権者と交渉し、競売に依らない手段で担保不動産を高く売る。これが任意売却のしくみです。
任意売却と通常の売却の違い
任意売却と通常の売却の大きな違いは、「ローンの状況」と「売却に関わる手続き・交渉の複雑さ」にあります。
通常の売却は、住宅ローンを滞納していない状態で行います。売主が自由に不動産会社を選び、価格設定や売却時期も自分の意志で決められます。売却代金でローンを完済できれば問題なく取引が成立し、手続きはシンプルです。
一方、任意売却は、住宅ローンの返済ができなくなり、売却代金ではローンを完済できない状況で用いられる方法です。抵当権を持つ金融機関や保証会社など、複数の債権者との調整が必須で、売主だけの判断では進められません。売却価格や買主の選定にも債権者の同意が必要となり、手続きは通常売却よりも複雑です。
つまり、通常売却は「売主が主体となって自由に進められる売却」であり、任意売却は「ローン返済が困難なときに、債権者の同意を得ながら進める特別な売却方法」である点が異なります。
任意売却と競売の違い
競売とは、ローンの返済ができなくなったときに、債権者が債務者(お金を借りた人)の財産を差し押さえ、裁判所を通じて売却する手続きのことです。競売によって売れた代金は、優先税を除き、抵当権の順位に沿って債権者に配分され、もし余りがあれば後順位の抵当権者や配当要求者に支払われます。
任意売却は、この“競売にかけられる前の段階で行う売却方法”です。住宅ローンの滞納が続くと、最終的には競売へ進むのが一般的ですが、前述のとおり競売は債権者にもデメリットが多いです。そのため、債務者の意思(=任意)に基づき、一般の市場で売却を進める「任意売却」という手段が取られています。
両者の大きな違いは、まず「売主(家の持ち主)の意向がどこまで反映されるか」。そのほか、手続きの進め方や、売却後の結果にも大きな差があります。
▶ 関連記事:任意売却と競売の違いは?メリット・デメリットを図解で徹底比較
任意売却のメリット
1.競売より高く売れる
任意売却の場合、売却価格は普通の市場価格と同じくらいか、それに近い金額で取引されます。金融機関などの債権者も「できるだけ高く売れること」を条件に承諾するため、不当に安く買い叩かれる心配はほとんどありません。
2.近所に知られにくい

実際にBITに掲載されている競売物件情報
自宅が競売にかけられると、まず裁判所の執行官や不動産鑑定士が訪れて、家の中や外を調査します。その後、競売の情報はインターネットの競売サイト(BITなど)や新聞に掲載されるため、「あなたの家が競売にかかっている」という事実が知られる可能性があります。しかし、任意売却の場合は、広告や内覧も通常の不動産売却と同じように進められるため、ご近所に知られる心配がほとんどありません。
▶ 関連記事:競売や任意売却はチラシや広告で近所にバレる?バレない3つの対策
3.引越し費用を交渉できる
競売では落札代金すべてが債権者への返済に回されるため、引っ越し代は出ません。さらに、通知から1週間以内に退去を求められることが多く、応じなければ強制退去させられます。任意売却の場合、売却代金の中から30万円程度までの引っ越し費用を確保できるケースがあります。また、引っ越し時期も買主と相談して決められます。
▶ 関連記事:任意売却で引越し代を確保するコツ
4.売却後の借金について交渉できる
任意売却をした後は、住宅ローンの残り(残債務)を支払う必要がありますが、毎月の返済額は数千円~1万円程度の支払いで済むケースが多いです。残債の交渉については後述します。
▶ 関連記事:任意売却後の残債はどうなる?払えない時の対処や時効について解説
5.費用の持ち出しがない
仲介手数料やその他の諸費用は売却代金から支払えるので、持ち出しでかかる費用はほとんどありません。(役所で取得する本人確認書類の取得費用や印紙代程度は必要、とお考えください。)一般的な居宅であれば、数千円から2万円程度の範囲で収まるでしょう。
▶ 関連記事:任意売却の費用・手数料は?初期費用が無料の理由と仕組みを解説
任意売却のデメリット
1.住宅ローンを滞納することが必要
▶ 関連記事:住宅ローンを滞納したらいつから競売か?滞納月数別の対処法を解説
2.連帯保証人に影響を及ぼす

住宅ローンを滞納すると、連帯保証人にも返済請求が届きます。もし連帯保証人がすべて返済すれば、任意売却や競売を回避できますが、住宅ローンを全額肩代わりできる人は、ほぼいないのが実情です。そのため任意売却をした場合でも、残った借金は連帯保証人にも責任が及びます。保証人も返済の一部に協力する姿勢を見せなければならないケースが多いのです。
また、連帯保証人と似ている立場として「連帯債務者」がありますが、こちらは借り主とまったく同じ返済義務を負う人で、当然ながら解決のためには協力が不可欠です。任意売却したいが連帯保証人に迷惑をかけたくない、という方は多いですが、これについては以下で解説しています。
▶ 関連記事:任意売却の際、連帯保証人の協力は必須なのか?
3.ブラックリストに載る
よく誤解されますが、任意売却をしたからブラックリストに載るのではありません。たしかに関連はしていますが、信用情報に任意売却した経緯が記載されるわけではないのです。
厳密にいえば、任意売却する時点で、すでに延滞の記録が信用情報(ブラックリスト)に残っているのです。そのため、少なくとも5年間は新しいローンやクレジットカードが作れなくなります。また、連帯保証人や連帯債務者も信用情報(ブラックリスト)に登録されます。
▶ 関連記事:任意売却するとブラックリストに載る?信用情報への影響をプロが解説
4.任意売却に対応できる不動産会社が少ない
任意売却を扱える不動産業者は限られています。その理由は、任意売却は普通の売却に比べて時間も手間もかかるからです。通常の売却なら、依頼から2~3カ月で成約することも多いですが、任意売却は3~6カ月、長いと1年近くかかる場合もあります。しかも、不動産会社の仲介手数料は「売れたときの成功報酬」なので、時間をかけても成約に至らなければ利益になりません。さらに任意売却は、法律や金融機関との交渉など専門的な知識とスキルが必要です。こうした理由から、多くの不動産業者は敬遠し、任意売却に対応できるところが限られているのです。
▶ 関連記事:任意売却に強い不動産会社とは?
任意売却できない場合もある
債権者が許可しないケース
債権者が任意売却を認めない理由には、いくつかの代表的なケースがあります。まず、そもそも任意売却を一切認めていない債権者も存在します。また、任意売却自体は認めていても、「売却時に残債全額を完済すること」を条件とする債権者があり、これは実質的に任意売却に応じているとは言えません。
次に、あなたが住宅ローンを滞納中に金融機関からの連絡や書面への応答を一切せず、連絡を絶っていた場合です。このような非協力的な状況では、債権者から「今さら交渉には応じられない」といった回答を受け、任意売却の申し出が却下されることがあります。また、仮に任意売却の交渉に入れたとしても、家の内覧に非協力的であったり、売却後の借金を返済したくないような姿勢を見せると、やはり債権者との信頼関係が崩れ、最終的に競売になる可能性が高まります。
時間がない
たとえば、滞納前に相談した場合、金融機関の手続きや裁判所のスケジュール次第ですが、短くても1年、最大で2年近くの時間があります。次に滞納中の場合、滞納月数にもよりますが、保証会社や債権回収会社(サービサー)に債権が移管される前後で任意売却を申し出れば、そこから8ヶ月から1年程度は時間があります。
しかし、競売開始決定後になると状況は厳しくなります。競売は進みが早く、短い場合で3ヶ月、長くても半年程度で入札期間を迎えます。任意売却できる期間は、完済できるケースで開札日の前日まで、そうでないケースでは入札期間初日の2週間前までが目安です。この段階で任意売却を申し出た場合、たとえ債権者から許可が出ても、売却は困難になります。なぜなら、不動産が差し押さえ状態なので、原則として買主が住宅ローンを使えず(一部の担保融資は例外)、購入できるのは現金を持っている人か、転売目的の買取業者に限定されるからです。さらに、金融機関もすでに競売に踏み切っているため、今さら任意売却の話には応じにくいのが実情です。
結局、任意売却を成功させる鍵は「どれだけ早く動くか」に尽きます。安全に手続きを進めるためには、滞納前または滞納初期の段階で相談し、債権者への根回しを始める必要があります。
買い手がつかない
任意売却はタイムリミットがあるため、買い手がつかなければ最終的に競売になります。売却を成立させるには、まず適正な売り出し価格の設定が重要です。売り出し価格が相場よりも高いと、当然ながら買主は見つかりません。実際に当社にご相談された方で、別の業者に依頼していたが全然売れなかった、というケースがありました。調べてみると、相場が1,400万円前後なのに対して、売り出し価格が1,900万円でした。隣近所が500万円近くも安く売りに出しているのですから、売れないのは当然です。最終的には相場の1,400万円で売却でき、ギリギリで競売を回避できました。
また、不動産が動きやすい時期とそうでない時期も影響します。例えば、引っ越し需要が高まる2月から4月頃は、新居を探す人が増えるため物件が売れやすくなりますが、反対に7月や8月の夏場は動きが鈍くなり、任意売却でも買い手がつかないケースが増える傾向があります。
▶ 関連記事:任意売却できないケースや買い手がつかない売れない場合の対処法
任意売却後の借金はどうなる?
任意売却後も、住宅ローンを完済できずに残ってしまった借金が「残債(ざんさい)」です。日本の住宅ローンは、担保である家を手放したからといって借金は自動的に消滅しません。そのため、任意売却後の残債については、金融機関や保証会社と交渉し、改めて分割払い、一括和解による減額交渉、あるいは債務整理を検討する必要があります。
分割弁済(少額払い)
任意売却後の借金は、月々5,000円から1万円程度の分割弁済をするのが一般的です。この支払い額を決めるため、面談時に生活状況確認表や収支表を提出し、実際の生活に合わせた金額で債権者との合意を目指します。
サービサーとの一括和解
民間の住宅ローンは、任意売却後に債権がサービサー(債権回収会社)へ譲渡されることがあり、この場合は話し合いによって一定額を一括返済することで残りの債務が免除される「一括和解(債権放棄や債務圧縮)」という解決策もあります。
たとえば、住宅ローン残債が2,500万円あり、家を1,500万円で売却できた場合、残りの債務は1,000万円となります。この債権についてサービサーと交渉し、100万円の一括支払いを条件に和解に応じたとします。この場合、債務者が支払うのは残債1,000万円のうち100万円で、900万円が免除されます。
▶ 関連記事:競売寸前だった家を任意売却し、残債97%免除になった事例
債務整理
払いきれないほど多額の借金がある場合は、債務整理(任意整理、個人再生、自己破産など)を通じて、金利のカットや元本の大幅減額、または免責といった法的な手段も選択肢となります。
時効の援用
なお、任意売却後の残債にも消滅時効があり、一般的に5年ほどが目安とされますが、債権者から請求や裁判を起こされると時効はリセットされます。時効が過ぎた場合でも自動的に借金がなくなるわけではなく、「時効の援用」という手続きを行い、正式に時効の成立を伝える必要があります。
任意売却と自己破産の関係
任意売却と自己破産は、まったく異なる法律上の手続きです。家を売却したあとに借金が残ったとしても、その残債を返す覚悟があれば、必ずしも自己破産は必須ではありません。しかし、残債の支払いが現実的に難しい場合には、自己破産を含む債務整理も選択肢に入るでしょう。
自己破産による影響は、原則として手続きを行った本人に限定されますが、生計を共にする家族については、資産調査が及ぶこともあります。また、住宅ローンを滞納した場合でも、債務整理を選んだ場合でも、連帯保証人や連帯債務者といった保証人にも影響があります。
自己破産したら借金は帳消しになる?
自己破産を申し立てると、裁判所でその審査が行われ、借金が帳消しになるかどうかが判断されます。これを「免責(めんせき)」といいます。免責が認められるか否かは、自己破産した経緯によって左右されます。具体的には、ギャンブル、無計画な借金などの浪費が理由だと、免責が認められないことがあります。
また、仮に免責が許可されても、すべてが帳消しになるわけではありません。裁判所の判決による損害賠償金や、税金などの公的な債務(公租公課)は、自己破産後も支払い義務が残ります。
一方で、自己破産が認められた場合、税金などの債務を除き、すべての借金が帳消しになります。ただし、一度自己破産で免責を受けると、それから7年間は再度自己破産する際の審査が厳しくなり、自己破産できない可能性が高いです。さらに、自己破産後は最低でも5年間は金融機関からの新たな借り入れが事実上不可能になります。
任意売却後に自己破産する人は少ない
前述のとおり、任意売却後の借金は大幅に圧縮されるケースがあります。実際、当社で任意売却した人のほとんどは、自己破産せず返済しています。自己破産は残債を整理する最終手段ですが、任意売却の段階で柔軟な返済計画を立てれば、この最終手段を回避できるケースがほとんどです。
▶ 関連記事:住宅金融支援機構での任意売却後は残債免除される?プロが徹底解説
任意売却後も住み続けたい
家を売却すれば、引っ越さなければならない。これはどの方もご認識はあるでしょう。しかし、当初は“マイホーム”、つまりご自身のものとすべく買ったはずです。また、引越しできない事情を抱えている方も少なからずいます。そんな場合は、『親族間売買』あるいは『リースバック』のいずれかを成立できるかを考えます。
協力的かつ経済的に余裕がある人に頼れるならば、親族(知人)間売買が安心です。持ち主が知り合いですから、ビジネス抜きで交渉できる可能性が高いためです。
一方リースバックは、第三者である投資家に自宅を買い取ってもらい、賃貸物件として住み続けるものです。この場合、家賃の支払いがあります。買主は投資家で、投資妙味を見出した際に買い手となるのです。
リースバックの成功率
リースバックをしたい方は数多くいらっしゃいます。その成功率を上げるのは、次の要件を満たすケースです。当てはまる事柄が多いほど、成功率が上がります。
- 人口の多いエリアにある物件
- 一般的な居住物件(店舗付き住宅など、特殊な用途ではない。テナント除く。)
- 家賃利回りが高い
- アンダーローンである(売却額>ローン残高)
ローンの貸し手に対し、リースバックは“禁句”
もともとリースバックは、不動産を使って資金調達(現金の用立て)あるいは、法人などが節税のために使う手法です。換金と同時に使用料(この場合は賃料)を払う契約ですから、不動産に関する借金がないことが前提です。売却と同時に賃貸となることが通常の売却との違いと言えます。
「リースバック≒資金調達または節税目的」を念頭に置くと、任意売却との温度差が明確になるでしょう。
任意売却は主に、住宅ローンをはじめとする担保融資が滞納となり、金融機関の許しをもらって売却するものです。そのため、主導権はお金を貸し、なおかつ返済を待っている金融機関が握っています。このことから『任意売却の主役は、金融機関である』と言えます。
つまり、「借りたお金は払えないが、第三者には家賃を払う。このまま住み続けたい。」という要求は債権者にとって、受け入れがたいものと言わざるを得ません。そのため任意売却時には債権者に対し、リースバックを前面に出すことは避けるべきなのです。
▶ 関連記事:リースバック・住宅ローン困難のまま住み続ける
任意売却に必要な滞納期間
住宅金融支援機構を除き、6カ月間の滞納または自己破産などの任意整理による期限の利益の喪失をもって開始できます。販売活動を開始して3~6カ月経過しても売却できない場合、債権者は並行して競売を申し立てます。競売手続きが進行していても、開札日の前日までは任意売却が可能ですが、実際には開札日の約一カ月前までに買主が決定していないと、住宅ローンの申し込みや審査、債権者による抵当権抹消に必要な書類の準備が間に合わなくなります。
住宅金融支援機構の場合
住宅金融支援機構の借り入れでは、6か月間滞納しなくても専用の「任意売却申出書」を提出すれば任意売却できます。滞納前であれば、申出書は借り入れを行った銀行の窓口に提出し、滞納中の場合は機構の債権回収を担当する債権回収会社へ提出します。機構は任意売却に積極的で、2~3か月滞納すると、任意売却を推奨するパンフレットが届きます。
任意売却が成立するまでにかかる時間
任意売却が成立するまでの期間は、物件の場所や状態、そしてどの債権者が関わっているかによって大きく変わります。一般的には、すでに競売手続きが進んでいる場合は 1~3か月程度、滞納前の早い段階で動き始めれば 6か月~1年半ほど、そして代位弁済後の場合は 2か月~1年程度が目安になります。
任意売却にかかる費用
前述のとおり、任意売却には持ち出しでかかる費用はほとんどありません。仲介手数料などの諸費用は売却代金から支払います。
仲介手数料
仲介手数料は、成功報酬として売買契約が成立した際に発生し、その上限額は宅地建物取引業法で定められています。具体的には、売却価格が400万円を超える場合、(売却価格×3% + 6万円)+ 消費税が上限となり、この費用は売却代金から充当されます。
司法書士費用
司法書士費用は、主に抵当権の抹消登記をするのにかかります。この費用には司法書士に依頼するための報酬や、登録免許税などの実費が含まれます。通常、5万円から10万円程度が相場です。ただし、登記の手続きや複雑さによって変動することがあります。
管理費・修繕積立金の滞納
マンションなどの区分所有物件の場合、管理費や修繕積立金の滞納分があれば、それらも売却代金から清算されます。これらの滞納金は、新しい買主に引き継がれることはないため、売主の責任として支払う必要があります。
固定資産税などの滞納分
固定資産税や都市計画税など、不動産にかかる公租公課の滞納分も、売却代金から清算されることが一般的です。これらの滞納を解消することは、任意売却を進める上で重要です。
▶ 関連記事:税金滞納で差押えや競売に?任意売却で回避する方法をプロが解説
任意売却の流れ
次に、任意売却の主な流れについてです。住宅ローンが払えなくなった際、任意売却活動に入るまで、以下の流れとなることがほとんどです。
①住宅ローン滞納開始
任意売却のステップとして、まずローン滞納があります。金融機関は一般に3か月以上の滞納を以って、“事故債権”と見なします。平均的には、半年の滞納で回収不能先と判定し、任意売却交渉へ入っていきます。
②督促やローン契約破棄予告
ローン引き落としに遅れが生じると、金融機関から手紙や電話などで督促を受けます。その内容として「信用情報に登録」「ローン契約の破棄」「自宅の差し押え」といった文言があります。これらは任意売却をするにあたって避けられない(※)ものです。
(※)自己破産などの債務整理をした場合は、弁護士などが代理人となるため、債務者は督促を受けません。
③一括返済請求と競売予告
ローン滞納が3か月以上になると、金融機関は信用情報にその登録をします。ローン契約は破棄となり、ローン残高全額を一括で払うよう求めます。これが一括返済請求です。同時に競売の申し立てを示唆する文言を見ることになります。
(※)②あるいは③の時点で債権者へ申し出をすると、任意売却活動が始まります。
④任意売却(販売)活動
債権者(ローンの貸し手)との交渉を経てから販売活動に入ります。通常、3か月から半年程度の期間を設け売却を進めます。この間、相談者は売主として家の内外の見学に協力していただきます。
⑤売買成立と残債務の交渉
購入者が決まると、債権者との最終調整に入ります。買主と売買契約を締結し、引き渡し時期などの交渉などを行います。不動産の売却が決定すると、決済日までの期間に残債務(売却後に残った借金)について債権者と交渉し、その後の支払額や振り込み先などの通知を受けます。
▶ 関連記事:任意売却後の残債はどうなる?払えない時の対処や時効について解説
任意売却の流れが図解でわかる!競売経験者が教える相談から再建までの手順
相談先を選ぶ際の注意点
任意売却の相談先として、弁護士や銀行などが思い浮かぶかもしれませんが、前提として、実際に不動産の売却活動を行うのは不動産会社になります。ですので、リスケの交渉などを除けば、基本的に不動産会社が相談先となります。ここから、弁護士に相談すべきケースや、銀行に相談することのリスクなどを解説します。
弁護士や司法書士など
任意売却だけを目的とするのであれば、弁護士に依頼する必要はありません。不動産事業者だけで十分にその対応は可能ですし、その方が相談費用などの負担もないので金銭面でも有利です。一方で、住宅ローン以外にも借り入れがあり、その整理をしたい、自己破産を考えている、などの場合は、弁護士への相談が望ましいでしょう。当社では弁護士との無料相談もできますので、まずは、お電話やLINE相談で現在の状況をお伝えください。相談員がお話をうかがった上で、弁護士への相談が必要と判断すれば、任意売却を理解している先生におつなぎします。
▶ 関連記事:任意売却をする際に弁護士に相談すべき場面
借り入れをしている金融機関
住宅ローンの滞納前に返済条件の変更、いわゆるリスケジュールの相談をするのであれば金融機関は良い相談先です。しかし、任意売却の相談をしても、不動産売却の実務を行うのは不動産会社であるため、直接金融機関に相談する意味はありません。また、任意売却が始まると、所有者(売主)と債権者(金融機関)の間で利害の対立が生じるため、注意が必要です。
債権者である金融機関は、売却代金から貸し付けたお金を少しでも多く回収したいと考えます。一方、所有者は、売却代金の一部から引っ越し費用や滞納している税金などの捻出を希望します。金融機関から紹介された業者が任意売却を進める場合、その業者が債権者に忖度して進める可能性があるため、良い結果にならないこともあります。このように利害が対立する関係性となるため、住宅ローンを借り入れている金融機関への相談は避けるほうが得策と言えるでしょう。
大手=任意売却に強いとは限らない
任意売却も不動産の売買であることに変わりはありません。しかし、通常の売却と大きく異なるのは、その業務量と債権者や役所、管理会社などとの調整力です。これまで任意売却の仲介対応をしてきて、いろいろな業者に出会いました。任意売却に取り組みたがる不動産業者は多くいますが、実際にやり始めるとあまりに面倒なうえ、任意売却に成功しても法律で定められた仲介手数料には限りがあるため、途中で対応がおざなりになる業者もいます。任意売却は、金融機関によってその動向が若干異なり、絶対に応じない先や、応じる姿勢だけは見せるもののその条件が非現実的で実質は応じない先もあります。金融機関の動向は、不動産市場と同じくどんどん変わっていくものです。任意売却に特化した不動産業者は無名であっても、その案内を聞けばおおよその力量が分かります。
業者変更は簡単ではない
不動産会社との媒介契約は、一般的に3か月更新の自由契約です。この契約の期限が切れ、他の任意売却業者に変更する、いわゆる媒介替えは、「とりあえず大手に依頼し、ダメなら専門業者に切り替える」という考えとは異なり、実際には簡単ではありません。契約終了後の業者変更は法的には問題ないのですが、現場では「媒介替えは困る」と渋る業者が存在するため、トラブルになる傾向があります。
任意売却の無料相談

テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で任意売却119番の支援事例が紹介
ご自身でできる対策をしても住宅ローンの返済ができない、あるいは金融機関からの督促が始まっている場合は、ご相談ください。私たち「任意売却119番」は、住宅ローン問題と任意売却のプロフェッショナルです。金融機関との交渉から売却の手続き、売却後の生活再建までサポートいたします。
実際に当社へご相談された方の解決事例は、「任意売却の成功事例(ケース別の解決方法) 」をご覧ください。
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