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2021/09/05(公開: 2019/07/12)

任意売却を選んだほうがいいのでしょうか?

任意売却は、ローンが払いきれない方が仕方なく選ぶ手段です。つまり、積極的に選ぶものではありません

ローンが払えなくなったので、仕方なく家を手放すものです。選ばざるを得ない選択肢、それが任意売却です。

1.住宅ローンが支払えない…任意売却を選ぶべきですか?

1-1.はじめに:実感のない好景気と苦しい生活

株価や企業業績がいかに良くなっていても、一般国民の所得増加には至っていません。
20年前に比べると、給与所得者の可処分所得は明らかに減っています(※参考)。
給与は安定しているのに、生活が楽ではない。妻もパートタイムなどで家計を支えているのに、教育費の準備すらおぼつかない。住宅ローン以外にも借金がある。税金が払えていない。ましてや夫婦の老後資金など、考えるだけで暗い気持ちになる。こんな声が多く聞かれます。いわゆるジリ貧状態です。

どんな状況下でも工夫して減らせないのが、すでに組んでしまった住宅ローンです。もしそれが返済できなくなった場合、競売や任意売却で自宅を手放さざるを得ません。家を失うだけならまだしも、売っても住宅ローンを完済できず、借金が残ってしまうことも多いのです。

(※参考)
ダイヤモンド・オンライン『同じ年収でも「手取り」は15年下がり続けている』

1-2.『任意売却が最適解』とは言わないが、ベターである理由

任意売却とは?メリット・流れや競売との違い

1)基本の:任意売却は担保割れ
まず、任意売却は、強制執行(競売)を避けて、市場で売却を図るものです。
基本的に、担保割れ(オーバーローン)物件が任意売却物件に当たるため、抵当権を設定している債権者(ローンの貸し手)の承諾を得て行う売却方法です。

2)基本の:任意売却には滞納が必須な理由
金融機関は、担保割れでは基本、売却に応じません。住宅ローンを完済してもらわないと、抵当権の抹消に応じられないからです。しかし、住宅ローンが事故債権化、つまり滞納が3ヶ月以上続くと、『ローンが払えないなら、売却額がローン残高に足りないその差額を用意することもできないよね。』ということが明白なので、完済できなくとも売却に応じる”任意売却”が可能となるのです。滞納が生じたうえでできる手続きなので、ペナルティとして、信用情報に延滞履歴が登録されることは免れることはできません。

3)基本の:競売よりはずっと有利
住宅ローンが滞納となってはじめてできる、任意売却。ローン破綻=競売が原則であるため、任意売却の比較対象は競売となります。
強制執行である競売と比べると、任意売却は、以下の優位性があります。
・競売申立に猶予がある
・価格が市場価格に近い
・残る借金が圧縮されやすい(任意売却のほうが売却が早いため、遅延損害金の加算がその分少ない)
・引渡し時期が交渉できる
・ある程度の引越し代の期待ができる
・物件に差押えがついた場合の税金納付が一部できる
・マンションの場合、管理費と修繕積立金の多くが返済可能(上限あり)
・競売前ならプライバシーが守りながら売却可能

2.任意売却の検証 ~優位性の真実~

では、任意売却がいいのか?という点については、以下検証していきましょう。
少なくとも、任意売却を最初から除外するのは不合理であろう、と言ってもいいでしょう。

2-1.任意売却は、競売のデメリットをカバーできる

1)価格が市場価格に近い
任意売却の場合、債権者が価格決定の主導権を握ります。債権者は、競売申立の猶予を与える代わりに、『実勢価格(時価)』で売却することを強く求めます。そのため、”任意売却だと買い叩かれる”といった心配はありません。債権者は、安価で担保物権が取引されることは、許さない、というのが基本的な姿勢です。

2)残る借金が圧縮されやすい
これは、上記1)に連動します。高く売れればその分、残る借金が減るのは明らかです。また、競売の前に売却をすることから、任意売却は早期に売却が整うため、遅延損害金の加算がその分少なくなります。競売の場合、申立費用も債務者(ローンの借り手)の負担となり、一層借金が大きくなりがちですが、申立ての前に売却ができれば、加算もありません。ただし、任意売却と競売が並行で行われることもあるので、任意売却をしていれば、競売申立費用の加算が一切ない、というわけではありません。

3)引渡し時期が交渉できる
任意売却は、金融機関が値決めを主導するものの、傍目には通常売却と同じ進み方をします。そのため、買主側と引渡し時期などはある程度交渉することも可能です。たとえば、『子の卒業式が3月15日にあるので、引き渡しを20日待ってもらえないか?』などです。もちろん、買主にも都合や希望があるので、お互いの工夫や譲歩も必要です。

4)引越し代の期待ができる
引越し代は、「運送会社に払う送料程度」とお考えください。そのため、引越し費用として債権者から配分を受けられるのは、~20万まで程度が目安となります。借りる賃貸物件の敷金や礼金、保証金、火災保険料や家賃保証加入料などは、考慮されないため、事前の準備が不可欠です。

5)物件に差押えがついた場合、税金納付ができる(上限あり)
租税や健康保険料の滞納について、物件に差押えた際は、任意売却時に交渉をかけて解除をしてもらわなくてはなりません。もちろん、交渉だけは解除はできないため、買い手がついた際、売却代金のなかから一部を債権者に配分してもらい、納付をします。残った税金はその後、分納で納めていくのです。なお、優先税であれば、全額または売却代金の範囲内で納付が可能となります(抵当権より優先されるため)。

6)管理費と修繕積立金滞納分の返済可能(上限や内容に指定あり)
多くの債権者は、任意売却の売却代金のなかから、滞納している管理費などを支払うことを容認しています。住宅金融支援機構ならば、過去5年分まで費用控除してくれます。ただし、管理費や修繕積立金の元本部分のみです。遅延損害金、駐車場や駐輪場代、町内会費は認められません。この部分は、債務者が用意する必要があります。

7)競売を避け、プライバシーが守る
任意売却を期限までに申し出ると、ほとんどは競売申立てに猶予が設けられます。その間に任意売却を成立させることが目標となります。任意売却中の販売活動については、チラシや広告、内覧会などを避けてほしい場合、ご希望に添うことができます。ただし、レインズ掲載は必須です。
競売になると、その情報が裁判所やインターネット、新聞などに載るため、家の中の状況や経済的に困窮していることが察知される可能性が高くなります。


このように任意売却には、競売と比べて様々なメリットがあります。
債権者にとっても、債務者との連絡が取れ、債権の高い回収が望めます。買主は、物件を内覧し、売主をコミュニケーションを取りながら安心して不動産を購入することができます。売却時には、金融機関と相談のうえ、残った借金を今までよりも少ない返済額で返していく交渉が可能です。

最後に:任意売却で解決をするコツ

~ 三方よしで取り組みましょう ~
任意売却の際、債権者や買主の都合や心証も考えることが大切です。
「引越しするのに、敷金も出してもらわないと転居できません」
「内覧は何度も来ないでほしい」
「家の状態はよくないけれど、高く売ってほしい」
「転居は年度末まで待ってほしい」
「時価より高く売ってほしい」

任意売却は、売主・債権者・買主の三者の合意でもって成立する「取引」です。そして、誰かのためだけの”魔法の杖”ではありません。
競売と比較すれば、優位性のある取引ですが、その有利さを活かすのかどうかは、売主である相談者の姿勢も大きく影響します。

相談者にすれば、ローンは払いたくても滞納せざるを得なかった、競売で取り上げられるよりは、と、泣く泣く家を任意売却で手放すケースも多いものです。しかし、その思いや個人の都合は、売買という市場では反映されません。

それでも、任意売却を進める以上、できるだけ希望に近い決着を目指しましょう。私たちは相談者の希望と生活再建を目指してサポートをしています。ご希望がいくつもある場合には、優先度を決めていただくことを勧めています。

例えば、
1.リースバックで住み続けたい。
2.家は高く売りたい。
3.引渡しは、年度末まで待ってほしい。
4.引越し代が欲しい。
5.水面下で売却を進めたい。

別ページでご案内しますが、1と2両方は成り立ちません。つまり、「リースバックで高く売りたい」はそもそも両立しない希望です。
このように、現実論や相手の都合を総合的に判断し、折り合える条件を模索することになります。また、競売を避けるためにも、”期限までに、希望に近い条件で売却をする”これが、第一の目標となります。任意売却は、セカンド、あるいはサードベスト主義で取り組んでいきましょう。

担当者から:近年における債権者の動向『引越し代』

近年、住宅金融支援機構が引越し代については原則、一切配分しない姿勢を打ち出しており、他の金融機関もその流れに合わせてくる可能性は高いと思われます。引越し代について、多くの期待をもつのは禁物なのです。

任意売却を勧める不動産業者の中には任意売却の際、多額の現金を渡せるような勧誘をする先があると聞きますが、実際はそうではありません。

また、各金融機関は、”業者のブラックリスト”に近いものがあり、このような話を向けている業者や担当者をある程度把握しています。該当する業者との媒介契約に関しては、受付けこそしますが、手続きには厳しい調査を入れ、怪しいと感じた際は、以後の交渉に応じません。

高額の引越し代を約束する、など甘い言葉に誘われて、媒介を結んだが結局、競売になった、という相談も少なくありません。競落で終われば、業者の介入余地はないため、当然に引越し代などありません。

住宅金融支援機構は近年、引越し代については応じない傾向にあります。他金融機関もその流れに呼応する傾向があるので、ひと昔前のように引越し代ありきの任意売却は、債権者の態度を硬化させる可能性があります。過度な期待を持たないことが、賢明な判断です。