(52)任意売却と競売、どっちが得でしょうか?
「任意売却が本当に有利なのか?」という疑問や「任意売却でも競売でも、家を手放すという結果は同じでしょ。」という考えがあります。たしかにすべてのケースにおいて、”任意売却のほうが高く売れる”、”任意売却が必ずしも有利”とは断言できないこともあります。ここでは、任意売却と競売の結果について検証していきましょう。
残債務の伏兵:『遅延損害金』
ローンを滞納すると、年利で14%以上の遅延損害金が加算されるケースがほとんどです。ローン契約が破棄されるまでの間は、滞納金について。ローン契約が破棄されると、元本を含む全額に遅延損害金が加算されていきます。多くの場合、遅延損害金は年利14.6%とされていますので、元本2000万円の場合、ローン契約破棄後は毎日約8000円の借金が増えていくことになります。
遅延損害金は、ローン滞納により発生するため、任意売却中も借金は増えています。任意売却に比べ、競売落札は時間がかかりますので、任意売却で早く売れればそれだけ遅延損害金の加算も少なく済みます。任意売却は時価(実勢価格)で売却することを目指すことからも、借金が圧縮・少なくて済む可能性が高いのは、任意売却のほうだと考えています。
競売のほうが高く売れることもありますよね?
はい、物件によっては、競売のほうが高く売れることがあります。特に昨今の市場動向や不動産買取業者の競合により、不動産価格は上昇傾向にあります(2020年現在)。債権者(ローンの貸し手)も、そのことはよく承知しており、強気の値段で売るよう指示が出ています。
しかし、忘れてならないのは先の『遅延損害金』です。滞納から競売終了までは早くて8か月、長い時で1年半前後かかります。その間の遅延損害金は、元本の約1割から2割強となります。”高く売れる可能性”に賭けても、落札額がそれ以上に伸びない限り、見合わないわけです。しかも、競売の申し立て費用(約80万~120満程度)は、債務者の負担ということも忘れてはなりません。
競売しか方法がないケースもある
任意売却という選択肢を最初から捨てるのは、合理的ではないことはご理解いただけたと思います。しかし、任意売却をしたくても叶わない場合があります。それはどんな場合でしょうか。
●競売になった原因トップ5
1)ローン破綻
借金が返せなくなったことで、債務者の財産を差し押さえます。これは、住宅ローンに限らず、カードローンや事業資金の借入について経営者が個人保証、連帯保証人となっている借金も含まれます。
2)関係者が応じない
共有者や連帯保証人の足並みが揃わないケースもあれば、債権者や税務署が一部の納付で任意売却には協力できない、と突っぱねることがあります。その場合は、任意売却ができないため、ローン破綻=競売となります。
3)物件要因
任意売却で売れない場合、ゆくゆくは競売で処分となります。売買である以上、買い手が現れてはじめて成立します。
一般的な居宅以外の物件、交通の便がよくない、物件の管理状況が悪い、といった要因がある場合、どうしても人気は下がちで、中には競売にかけても入札すらないケースがあります。
4)住宅ローン以外の滞納での競売申立て
カードローンや消費者金融からの借入滞納で、自宅が差し押さえられることもよくあります。一般にノンバンクは対応がシビアです。差し押さえられた物件に住宅ローン設定があり、その住宅ローンが滞納していないまま抵当権者以外から競売申立をされると、任意売却が手続き上できず、入札期間を迎えてしまうことがあります。
5)租税滞納による差し押さえ(公売)
特に地方税(固定資産税や市県民税など)の滞納は、特に要注意です。昨今は、少額の滞納でも仮差押えをつける傾向にあり、「地方税回収機構」に窓口が変わると、特に厄介です。
支払いが苦しい時は、早めに相談に行って分納(分割で納める)交渉をしましょう。税金はたとえ自己破産をしても免責されない「借金」です。住宅ローン滞納より怖いのは、実は税金なのです。
まとめ:競売になっても、任意売却を試みる価値はある
任意売却を試みても、結果競売で終わってしまう可能性はあります。それでも任意売却という選択肢を最初から外すべきではない、と考えるには以下の理由があります。
【時間的な余裕】
まず、任意売却を申し出ることで、競売申立手続きを待ってくれることがほとんどです。任意売却に積極的な住宅金融支援機構融資の場合、一般に半年程度の猶予が与えられます。滞納をはじめてから、任意売却が成立するまでに1年前後かかることも多く、その間に次の生活準備をすることが可能です。
【経済的に有利】
市場価格での売却を目指すという点もそうですが、先の説明にもあった通り、遅延損害金や競売申立費用の発生を避けることで、借金の増大避けることが可能です。
また、任意売却により固定資産税滞納などによる差押えの解消や一部の納付、分譲マンションの管理費・修繕積立金の滞納分の全部または一部納付ができることもよくあります。
【精神的な負担軽減】
強制執行である競売は、裁判所手続きであるため、人の意向は反映されません。任意売却の場合は、私どものように任意売却に実績が多い担当者が窓口かつ相談先となるので、任意売却中はもちろん、任意売却後にどうなっていくのかの見込みもご案内が可能です。
知識は力です。相手の動向やスケジュールが分かっていれば、恐れる必要はありません。実際に任意売却をした方の多くが「早めに相談しておいてよかった」「”督促状”や内容証明書を受け取っても、予め聞いていた通りだったので、不安にならずに済んだ」とおっしゃいます。お子さんや高齢の親御さんが同居なさっている方こそ心づもりや準備期間が必要です。早めに相談なさってください。