夫が住宅ローンを支払う家:妻へ名義変更できるのか?
離婚や別居をきっかけに「夫が支払っている家を、妻名義に変えたい」という相談が増えています。
結論:住宅ローン名義を夫から妻に変更するには金融機関の審査を通過すれば可能ですが、現実には相当ハードルが高いのが実情です。
この記事では、住宅ローン名義を夫から妻に変更するのが難しい理由と、現実的な対処法を解説します。
なお、任意売却について知りたい方は、「任意売却とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説」をご覧ください。

- この記事の監修者
- 富永 順三 任意売却119番・代表コンサルタント
- ・年間相談件数3,000~5,000件
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- ・売却後の残りの返済額:月10,000円前後の方が多数
- ・くわしい経歴→「競売体験者」だからわかります
目次
住宅ローンの名義を夫から妻に変更できる?
住宅ローンの名義(債務者)変更は、金融機関の審査を通過した場合に限り可能です。
一方で、所有権の名義とローンの名義は別であり、抵当権が付いた物件の所有権変更には債権者(金融機関)の承諾が必要となります。
所有権とローン名義は別物
本文では、家の名義を「所有権」、ローンの名義を「債務者」として区別して説明します。
住宅ローン契約中は、金融機関が抵当権を設定しているため、債権者の承諾なく所有権を移転することは契約上できません。
契約違反となると、優遇金利の解除や一括返済請求の可能性があるため注意が必要です。
関連記事:離婚後に金利上昇で住宅ローン破綻。任意売却で再起した神戸市中央区の事例
住宅ローンが残っていない場合(完済済み)
登記移転の基本と税務上の注意点
ローンが完済されていれば、所有権の名義変更自体は比較的スムーズです。
離婚時の財産分与として移転する場合、登録免許税や司法書士報酬が発生します。
また、分与の偏りが大きいと贈与税の対象となることがあります。事前に税務署・税理士・弁護士へ確認しておくと安心です。
関連記事:離婚時に住宅ローンが残っている場合、財産分与はどうなりますか?
住宅ローンが残っている場合(返済中)
なぜ名義変更が原則困難なのか
抵当権付不動産の所有権移転には、金融機関の承諾が必要です。
無断での名義変更は契約違反となり得ます。
加えて、債務者を変更(夫→妻)するには、妻側の与信審査(収入・年齢・信用情報など)を通過する必要があります。
完済後に妻へ名義変更する場合の注意
離婚調停等で「夫が完済後に妻へ所有権を移す」と取り決めることはできますが、贈与税・不動産取得税・登記費用などの将来コストを見込んでおく必要があります。
離婚から期間が空く場合は税務取扱いに留意してください。
所有権だけ妻に変えてもリスクは残る
所有権を妻へ移しても、実体としてのローンが夫名義のままで滞納が生じれば、差押え・競売のリスクは回避できません。
離婚公正証書や和解調書があっても、住宅ローン契約上の「債務者(支払義務者)」は契約書に記載された名義人です。
そのため、たとえ家庭裁判所や公証役場で「夫が払い続ける」と取り決めても、金融機関に対する法的な支払義務の主体は変わりません。
もしその約束が守られず滞納が発生した場合、相手方に対して損害賠償や履行請求をすることはできますが、抵当権に基づく差押えや競売を止める効力まではありません。
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確実に「自分の名義」にするための基本方針
- ① ローンを完済してから、所有権を自身に移す
- ② ローン自体を自分名義(債務者)へ切り替える(審査通過が前提/同時に所有権も整合)
妻側が債務者に移行するには、一定以上の安定収入と年齢要件が求められます。
自営業・フリーランスでも審査は可能ですが、継続的な申告所得や2年以上の収入実績などが重視されます。
ケース別:名義変更の可否の早見表
| ケース | 名義変更の可否 | 主な条件・リスク |
|---|---|---|
| ローン完済済み | 〇 可能 | 登録免許税・司法書士費用。分与の偏り次第で贈与税の可能性。 |
| 夫が支払い継続のまま所有権だけ妻へ | × 原則不可 | 債権者承諾が必要。無断移転は契約違反・一括返済リスク。 |
| 妻が債務者へ切替(借換・引受) | △ 審査次第で可 | 収入・年齢・信用情報・物件担保評価を総合判断。 |
実務の流れ(妻がローンを引き継ぐ想定)
1. 与信と担保余力の確認
妻側の収入・年齢・信用情報、物件の評価額と残債の関係(オーバーローンか否か)を確認します。
2. 金融機関と方針のすり合わせ
借入先に「債務者変更」「借換」「持分買取の可否」などを相談し、必要書類と審査条件を確認します。
3. 税務・登記の事前見積
登録免許税・司法書士報酬・不動産取得税等の概算を把握し、偏った分与による贈与税リスクを確認します。
審査が通らない・名義変更が難しい場合の現実的選択肢
任意売却+リースバックで「住み続ける」を検討
妻名義への切替が難しく、滞納リスクを抱えたまま別名義で住み続けるのは危険です。
現実的には、任意売却で債務を整理し、リースバックで住み続ける方法が有効な場合があります。
状況により、返済条件の変更(リスケ)で延滞の回避を先に図ることも検討します。
よくある勘違いと注意点
「所有権だけ妻にすれば安心」ではない
所有権の名義だけを変えても、ローン滞納で差押え・競売に至るリスクは残ります。
契約違反の回避と、支払計画の現実性を優先しましょう。
「払っていれば契約違反にならない」わけではない
契約上、債権者承諾のない所有権移転は違反となり得ます。
支払い継続の有無にかかわらず、手続は必ず金融機関を経由してください。
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「妻名義にしたいが審査が不安」「所有権だけ移すと言われた」など、離婚と住宅ローンの問題は事前の設計が重要です。
状況を整理し、契約違反や将来税負担のリスクを回避できる道筋をご提案します。
任意売却119番では、現状整理 → 方針検討(名義/債務/住み続け)→ 金融機関との調整 → 売却後の生活再建までサポートします。
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