任意売却は住宅ローン滞納なしでも可能?認められる2つのケース
まず、任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなった際に、金融機関の合意を得て家を売却する手続きです。この任意売却を利用するには、住宅ローンの滞納が始まっていることが条件です。そのため、滞納していない状態で任意売却を利用することは、原則としてできません。
しかし、例外的なケースとして、滞納がなくても任意売却ができる場合があるので、くわしく紹介します。

- この記事の監修者
- 富永 順三 任意売却119番・代表コンサルタント
- 宅地建物取引士
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任意売却は住宅ローンの滞納が前提
任意売却を検討する場合、離婚や収入減などの理由から、住宅ローンを払えない状況が続いて滞納に至った人がほとんどです。しかし中には、まだ滞納していないが将来的にローンを払っていけるか不安という方もいらっしゃるでしょう。ですが、冒頭でお伝えしたように、任意売却をするには住宅ローンを滞納していることが前提です。
期限の利益の喪失が条件
任意売却は、住宅ローンの返済が苦しくなり、金融機関から残りの全額を一括で支払うように求められた際、そのお金を用意するために家を売る手続きです。
まだローンを滞納していない場合、「期限の利益」という、ローンを毎月分割で返済していく権利を持っています。金融機関は、この期限の利益を失っていない人に対し、「残りのローンを今すぐ全部返してください」と要求することはありません。
一括返済を求められていない状態では、そもそも任意売却をする必要性がないため、滞納がない段階で任意売却の手続きを始めることはできないのです。
債権者が同意しない
金融機関は、住宅ローンを最後まで予定通り返済してほしいと考えています。なぜなら、任意売却をされると、本来受け取る予定だった利息分の収入が途中で途絶えてしまうからです。
また、家を売ってしまうと、残った借金(残債)に対する担保がなくなってしまい、その債権が無担保の状態になってしまいます。こうした理由から、住宅ローンを滞納していない方が任意売却を申し出ても、金融機関は基本的にそれを認めません。
滞納なしでも任意売却できる2つのケース
多くの場合、任意売却は住宅ローンの支払いが難しくなってから検討するものですが、実は、ローンを滞納していない段階でも利用できるケースがあります。
ただし、どのような事情でも認められるわけではなく、金融機関が「やむを得ない」と判断する特定の事情が必要になります。
1.いずれ滞納する可能性が高い
現在ローンを滞納していなくても、この先支払いが非常に厳しくなると判断されるなら、任意売却が認められやすくなります。これは、金融機関が「早めに売却してもらった方が良い」と判断する可能性があるからです。
具体的には、仕事を変えたり辞めたりして収入が大きく減った、予期せぬケガや病気、または家族の介護で収入が減ってしまった、毎月のローンの金額がもともと高すぎる、退職金が予想より少なかった、すでに税金などを滞納しているといった事情がある場合、住宅ローンの滞納なしでも任意売却が認められやすいです。
2.そのほかの事情
たとえば、離婚が決まり、財産を分けるために家を売却する必要がある場合や、遠方への転勤が決まり、物理的に住み続けることも賃貸に出すことも難しいといった事情が挙げられます。
これらのように、個人の努力では解決が難しい特別な理由があり、このままでは確実に将来ローンの滞納が始まってしまうと判断される場合は、滞納なしでも任意売却に同意しやすくなります。
滞納ありでも任意売却できないケース
住宅ローンを滞納していても、金融機関が任意売却に同意しないケースが3つあります。
1.住宅ローンの返済開始から間もない
返済が始まって間もない時期に支払いが滞ると、銀行は返済能力そのものに問題があると判断しやすく、任意売却の了承を得ることが難しくなります。一般的に、住宅ローンを組んでから1年未満で滞納が始まると、銀行は任意売却の交渉に慎重になります。
2.競売の期日が迫っている
競売の期日が迫っていると、任意売却はできなくなります。なぜなら、任意売却で家を売るには、買い手を探したり、銀行と話し合ったりする時間が必要だからです。
一般的に、任意売却の手続きを始めてから実際に家を売る契約を完了し、決済までには最低でも3~6ヶ月くらいはかかると考えておいてください。もし、裁判所が決めた競売の入札開始日が、この目安の期間よりも近くに迫っている場合は、時間切れで任意売却は認められません。競売の期日がおよそ1ヶ月半から2ヶ月以内に迫っていると、銀行側も間に合わないと判断し、話し合いに応じなくなってしまいます。
▶ 関連記事:競売開始決定通知書が届いた後でも任意売却できる?
3.連帯保証人・共同名義人の同意が得られない
不動産の売却には、法律上の手続きとして、連帯保証人や共有名義人全員の正式な同意(承諾)が必要です。仮にこれらの関係者との意思疎通がスムーズにいかない、または関係がこじれているといった事情がある場合、合意を得るのに時間を要します。その結果、スムーズに任意売却を進めることが難しくなり、最悪の場合は競売にかかってしまうこともあります。
任意売却できないケースについては「任意売却できないケース、買い手がつかない、売れない場合の対処法 」でわかりやすく解説しています。
任意売却するときの注意点
任意売却後も残債は残る
任意売却は、ほとんどの場合で売却金額が住宅ローンの残債を下回るため、家を売ったあとも借金が残ってしまいます。家を売却できても、残ったローンについては、その後も支払い続ける義務が残ります。残った借金は、債権者とと話し合いをして、毎月5,000円~10,000円程度の無理のない金額を少しずつ返済していきます。
なお、残った借金を全額免除してもらうことは基本的にできません。任意売却は、あくまで家を売った後に残る借金を減らすための手続きであり、借金自体をなくすわけではないからです。ただし、借金の額を圧縮してもらう(減額)交渉はできる場合があります。この交渉は、売却の理由やあなたの生活の状況を詳しく説明し、銀行などの理解を得る必要があります。
任意売却後の借金を圧縮する具体的な流れはこちらをご覧ください。
▶ 関連記事:任意売却後の残債はどうなる?払えない時の対処や時効について解説
連帯保証人に影響が及ぶ
任意売却でローンが残ってしまう場合、その残った借金について、あなたと同じように連帯保証人にも支払いの連絡や請求が届きます。連帯保証人は、あなたが支払えないときには、代わりに返済する責任を負うためです。そのため、連帯保証人には事前に事情を伝え、よく話し合っておくべきです。
▶ 関連記事:任意売却の際、連帯保証人の協力は必須なのか?
任意売却専門の会社が少ない
任意売却は、通常の家の売買とは違い、特別な手続きが必要です。担保を持っている金融機関の許可がなければ売ることはできませんし、売る値段を決めるのも金融機関側です。
そのため、任意売却を依頼する不動産会社には、金融機関とスムーズに話を進めるための知識や経験が求められます。急いでいるからといって、慣れていない不動産屋に依頼するのは避け、任意売却を専門に扱っている業者に頼んでください。
任意売却を検討する前に
まずは金融機関に相談する
支払いが厳しいと感じたら、できるだけ早くローンを借りている金融機関に連絡しましょう。そこで「リスケジュール」の相談をしてみてください。
リスケとは、毎月の支払額を減らしたり、支払いを一時的に止めたりする手続きです。失業や病気などで一時的に収入が減ったなど、金融機関が納得する事情があれば、リスケに応じてもらえる可能性は高いです。
ただし、この条件変更の期間が終わると、元の返済額に戻るため、いつから支払いを再開できるか、どれくらい支払額を減らしたいかをしっかりと見据えて期間を決める必要があります。
▶ 関連記事:住宅ローンのリスケジュールとは?
住宅ローン以外の借金があるなら債務整理も検討する
住宅ローンだけなら金融機関との条件変更で解決できる可能性がありますが、カードローンや自動車ローンなど、住宅ローン以外の借金も抱えている場合は、司法書士や弁護士に相談し、「債務整理」という手続きを視野に入れましょう。
債務整理には、任意整理、自己破産、個人再生という主に三つの方法があります。特に「住宅ローン特則付き個人再生」という手続きを利用すると、住宅ローンはこれまで通り支払いながら、それ以外の借金を大きく減らしてもらい、決められた計画に沿って返済していくことができます。
また、もし任意売却を選んだ場合でも、家を売った後に残る借金(残債)について、自分で解決するのが難しいこともありますから、その後の残債の整理も含めて専門家に相談すると安心です。
▶ 関連記事:任意売却後の債務整理はどうすべき?6つの方法と注意点を徹底解説
まとめ

任意売却は住宅ローンの支払いを滞納していることが前提の手続きですが、実は滞納していなくても、銀行などの金融機関が認める特別な事情がある場合は、任意売却できることがあります。そのため、もし今後ローンの返済が厳しくなりそうだと感じたら、まずは借り入れ先の金融機関に相談してください。早く相談することで、競売になる前に、色々な解決方法の中から自分に合った方法を選ぶことができます。
私たち「任意売却119番」は、任意売却のプロフェッショナルです。金融機関と借金の交渉から売却の手続き、売却後の生活再建までサポートします。
任意売却については「任意売却とは?仕組みやメリット・デメリット」をご覧ください。
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