うつ病で働けない。住宅ローンが払えない時はどうしたらいいの?
うつ病やパニック障害などは、誰もが関わる可能性のある病気です。心の病は外見では病気とは分かりづらいため、周りの理解が得にくい傾向があります。また、就業が難しいほどの状況になると、長期に休職あるいは無職となるケースも多いと言えます。
この状態で住宅ローンを抱えていると、経済的にひっ迫しがちです。
鬱病をはじめとする精神疾患、総称して「心の病」は、放置したり、精神論で乗り越えようとするとたいてい悪化し、余計に仕事ができなくなることが多いものです。たとえ障害年金などの手当てを受け取ることができても、大きな減収になれば、生活は苦しくなります。病気とお金の問題で、さらに病状が悪化する恐れも懸念されますので、ローンが支払えそうにないと思った時は、周囲の知恵や助けを借りましょう。
払えない時の対処法:『無理をしない』
住宅ローンは、長期にわたって支払いが続く借金です。身体がすぐに回復し、もとの生活・仕事に復帰できるのであれば、親族に協力を求めるなどして多少の無理も効果的でしょう。しかし、精神的な病は、先の見えないことも多いものです。ローンを気にするあまり、無理を押して仕事を続けても、たいてい息切れを起こしてまた休職したり、症状が悪化して就業不能になるケースもあとを絶ちません。
◆家は守れないのか?
1.消えない住宅ローン
住宅ローンは、たとえ天災で家を失ったとしても消えません。阪神淡路大震災と東日本大震災で被災した方々のなかには、失ったり壊れたりした家の住宅ローンと、新しい家の家賃やローンの二重払いが起きています。
当然、病気やケガで働けなくなっても、住宅ローンの返済義務は無くなりません。消えるのはただ、団信(団体信用生命保険)の適用を受けた時、つまり保険が下りる状況になった時と、自己破産などで免責を受けた時です。
2.減った収入を補う手段はあるのか?
病気やケガをはじめ、団体信用生命保険が適用されないアクシデントには、何らかの手立てや事前の策はあるのでしょうか。
2-1.住宅ローン返済支援保険
住宅ローン返済支援保険というものがあります。これは、契約者が病気やケガで就業できなくなった場合に、住宅ローンの返済を保険でカバーしてくれるものです。この保険は、住宅ローンの融資をする金融機関を通じて、加入することが可能になっています。この保険は、加入者(債務者)が要件を満たす状態(病気やケガなど)になると、一定期間(3年間上限が多い)ローンを保険にて支払うことができるものです。全額支払いが免除されるわけでありませんが、健康や精神、経済状態を立て直す期間に、住宅ローンの心配をしなくていいのは、大きな安心と言えます。
2-2.就業不能保険・所得補償保険
一般的な生命保険金や団体信用生命保険は、亡くなった場合や高度障害を負った際にしか下りません。医療技術の発達で、入院や治療は長期ではないものの、以前のようには仕事ができず、収入減になることがあります。こんな際の保険に、就業不能保険・所得補償保険があります。これは、様々な理由でやむを得ず働けなくなった時の収入を補償する保険です。保険金は契約内容によりさまざまです。補償額を大きくすると、保険料も高いので、多くは生活費の一部補填の枠組みで加入することが多いでしょう。
2-3.傷病手当金や障害年金などの活用も
公的な支援も活用しましょう。傷病手当金や障害年金が受けられるかどうか、公的な窓口に相談します。実にさまざまな種類の支援や給付金がありますので、要件や内容をよく確認してください。
3.どうしても住宅ローンが払えない時は?
保険や国の制度などを活用して、家を守りたいところですが、公的な支援は原則、借金返済に充てることを目的に受けることはできません。治療や生活、子供の教育費を考えると、住宅ローンが払いきれないことも多いでしょう。
そもそも、仕事がままならない状態で、健康な時と同じ水準の生活を送ることは困難です。健康であっても、いつ何時思いもよらない事態になるか分かりません。
経済的な立て直しが難しい場合は、現実を見据えて、何を諦め、何を守るか?を真剣に考えましょう。家は大事ですが、人生や家族ほどの価値はありません。
また、ローンが払えないのは契約不履行ですが、犯罪ではありません(払えるのに払わない踏み倒しとは異なります)。
任意売却することにより、それまで負担に感じていたことにメドをつけ、身軽になったことで、症状が良くなる方もいらっしゃいます。
払えないときはいたずらに無理をしない。臆せず相談をしてみる。悩ましいけれど、払えなくなって、競売で家を差し押さえられる前に事を進めてみる。
動かないと思っていた歯車を自分で動かしてみることで、自信や確信に繋がったケースもあります。
自宅を任意売却した人たちはどうしているの?
多くは、公的な住宅(県営や市営住宅など)や賃貸住宅に転居なさっています。なかには実家に戻り、二(三)世代同居をされる方も。
公的な住まいは、事前に家を売却せざるを得ないことを説明し、相応の書面を提出すれば、申し込みができる自治体がほとんどです。賃貸物件も少し郊外に出れば、賃料の安い空家も多くあります。生家に戻れば、精神的にも経済的にも落ち着き、元気を取り戻す方も少なくありません。
家のローンに思い悩んでいた頃は、どうしたら家を守れるのか、ばかりに思いをめぐらせ、「家がなくなればホームレスになる…」と思い詰めがちです。ですが実は、住むところはたくさんあります。今の状況を基準に(絶対視)することで、自らの視野と選択肢を狭めているケースが多いことに早く気づいてもらえないか…と、私どもは日々相談者に接しながら感じています。