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2023/03/07(公開: 2019/10/12)

(38)住宅ローンの保証人から抜ける方法を知りたい

「住宅ローンの連帯保証人(または連帯債務者)から外れたい。」

これは簡単なことではありません。しかし方法はあります。ここでは住宅ローンの責任から解放される手立てに、どのようなものがあるのかをご案内します。

連帯保証・連帯債務者から抜け出すには

はじめに:連帯責任を外すか否かは、ローンの貸し手である金融機関が判断を下します。そのためこのご相談は、金融機関に直接なさってください。

ここでは確実に連帯責任から外れるにはどうすればいいのか、また交渉次第では承諾が得られる可能性がある方法をご案内します。

★連帯責任者から解放される方法

1)ローンを完済する…借金がなくなれば、連帯して負っている債務も消えます
2)売却して債務をなくす…ローン残高>売却額の場合は、差額を用意しなければなりません
3)ローンを借り換える…別のローンに組み替えた際、保証人は付けないローンとする
4)別の人に代わってもらう…より信用力のある人なら、なおベター
5)主債務者の与信力向上…収入や属性などで信用力を高めて、保証人不要であることに納得してもらう
6)追加担保を差し入れる…他に所有する不動産などを追加担保とする
7)物件の担保力が充分なことを理由に保証人解除を申し入れる…ローンが滞納となっても、物件を差押えれば全額回収できることをアピールする

4~7の手段は、金融機関が応じる可能性を模索した方法です。要は貸し手が不利にならないのであれば、検討の余地があるはずです。債務者の信用力向上を図る、より経済的に問題のない代わりの人を保証人として立てる、追加の担保の差し入れなど、金融機関にとってよい話であることが前提です。

断言できるのは、債務者の希望や都合だけ訴えても金融機関は応じないでしょう。簡単に外すくらいならば、そもそも連帯責任者を求める必要がないからです。

交渉結果を望むものにするには、相手に応じるメリットがあることが肝要です。

住宅ローンの連帯保証人から外れる方法


連帯保証人になった覚えがない

相談を受けていると、少なからず連帯保証人になった覚えがない、という方がいらっしゃいます。家族が勝手に連帯保証人の欄に署名押印をした、あるいは保証人等になる前提で所得証明などの書類提出やサインなどを求められたとは知らされていなかった、というケースです。充分な説明もなく、金融機関や家族に署名・押印を求められた、というわけです。

債務保証が無効であることを主張する

知らぬ間に借金の保証人になっていた、という場合はどうすればいいのでしょうか。債務保証の意思確認をしていない、あるいは保証人になるということを意識する機会もないまま署名押印したなど、契約無効を主張することになります。

ただし、金融機関に抗議したり、無効である旨や債務保証はしないと内容証明郵便などで送っても、その主張がそのまま認められることはほとんどないと思われます。詳しくは、弁護士など法律の専門家のアドバイスやサポートを受けながら進めてください。

リスケジュールの際、一家全員が債務者になることも

また、ローン返済が苦しくなった時にリスケジュール(返済計画見直し)をしてもらった。その際、配偶者や成人したばかりの子どもが連帯保証人として立てることを求められて、応じてしまった、というケースもあります。
リスケジュールは、支払いが苦しいからするのです。金融機関も回収を危ぶみますので、保証人を求めて万が一に備えるのですが、往々にして家一軒のために家族が苦しむことになりがちです。

(※上記は、相続で借金を負っている場合を除いて説明しています。)

離婚公正証書や離婚協議書は『絵に描いた餅!?』

金融機関との契約は社会的な約束、離婚時の約束は当事者間の約束です。

「社会ルール」と「家族ルール」の違いのようなものです。そのため、離婚時の約束はたとえ公正証書に記載していても、住宅ローン契約には影響を及ぼしません。また、元配偶者が約束を守らないからといって、公正証書に約束を守らせる強制力はありません。
離婚公正証書が有用なのは、養育費や慰謝料といった約束事を負担義務者が払わない時、その相手の財産や給与を差し押さえる手続きが簡便になる点です。
住宅ローンの対応について、書面でどのように記載するかは自由ですが、そもそも住宅ローンは債務者と金融機関の契約であるため、離婚とは切り離して考える必要があります。


相談事例

1)配偶者が連帯保証人

『離婚すれば、連帯保証人ではなくなると思っていた』
状況:主債務者は夫Y氏、連帯保証人に妻Nさん

相談:離婚して3年以上が経っています。突然金融機関から督促状を受け取りました。銀行に電話をすると、「Yさんの口座からここ3ヶ月分の住宅ローンが引き落とせていません。そのため連帯保証人に連絡しました。いつ振込めますか?」と聞かれたのです。”もう離婚していますので。”と返すと「離婚は関係ありません。支払い義務はNさんにもあります。」と言われてびっくりしました。家がどうなろうと構いませんが、、離婚後一人で子どもを育てている私にローンなど払えるはずもありません。もし私の給料が差押えられたら、生活できません。

結果:Nさんは連帯保証人です。残念ながら彼女からは、任意売却や金融機関との交渉はできません。借金の責任は同じなのに理不尽な話ですが、金融機関へは主債務者が連絡をする必要があります。Nさんは元夫Y氏に繰り返し連絡を入れたのですが、元夫は無視。仕方なくY氏の実兄を頼りました。実兄はNさんの窮状を知って動いてくださり、Y氏が連絡に応じるようになりました。家は任意売却し、残債務はY氏が負担することで決着がつきました。残債務の支払いや、不払いだった養育費もY氏のお兄さんが管理して支払ってくれているそうです。

2)夫婦で連帯債務

『一方だけではローンが組めない』
状況:夫婦共有、連帯債務。収入合算でローンを組んだが、離婚した。どちらも単独では高額の住宅ローンが組めない。

相談:夫婦共有名義で家を買いましたが、離婚。どちらにも不要な家ですが、オーバーローン物件であるため、売るに売れない状態でした。離婚後、私(男性側)は再婚。新しい妻と違う家を購入したいのですが、以前の家があるので次のローンが組めません。元妻側は離婚後体調を崩して転職。今は派遣社員として働いていますが、収入は以前の半分くらいにまで落ち込んでいました。

結果:元夫側は、売却損分を次のローンとまとめる”住み替え”をしました。元妻側は家とともに借金清算したいとの希望が強く、債務整理を選択しました。男性側は住み替えローンを利用したため、滞納を経た任意売却ではありません。オーバーローンの家を手放す際は、必ずしも任意売却になるわけではない、という一例でした。

3)故人が連帯保証人

『借金が相続人全員に引き継がれるとは知らなかった』
状況:主債務者Kさん男性、連帯保証人は亡父

相談:連帯保証人だった父が亡くなってもう10年は経ちます。父の死亡は銀行に届け出ていませんでした。私が住宅ローンを滞納してしまい、任意売却をお願いすると銀行から「お父さんの連帯保証は、私(K氏)、母、兄に相続されています。全員に任意売却の同意を取りつけて、ローン支払いをしてください。」と言われてびっくりしました。しかも銀行職員に「お母さんとお兄さんの家がありますよね。」と、暗に実家を差押えを匂わす発言がありました。このうえは、私が死んで住宅ローンを返す(団体信用生命保険を使う)のが責任ではないか、と考えていました。

結果:このようなケースは数多くあります。借金も相続されることを知らず、相続放棄の期限を過ぎてしまっている、または放棄ができない事情がある方がほとんどです。K氏の実家はローンがなく、債権者が差押えやすい物件でした。結局、実家を守るためにお兄様がローン残高と売却額の差額を立て替えることになりました。その代わり、お母さまの相続発生時にKさんが相続放棄をして、お兄様にお母さまの全財産を渡すことにしたそうです。

任意売却119番