2025/11/27(公開: 2021/12/20)
フラット35の返済中に売却する方法
家を売るときは、原則として住宅ローンを完済している必要があります。全期間固定金利型のフラット35を利用している場合も、このルールは変わりません。
自己資金を使って返済するか、家を売却した代金で完済することもできます。フラット35では、家を買う人にローンをそのまま引き継いでもらう制度など、特別な仕組みを利用できる場合があります。
本記事では、フラット35の返済中に売却する方法と、損をせずに家を売るための特別な制度や売却の手順を解説します。

- この記事の監修者
- 富永 順三 任意売却119番・代表コンサルタント
- 宅地建物取引士
20年の経験を持つ専門家が、解決策を無料でご提案します。
フラット35の返済中に売却する方法
結論からお伝えすると、固定金利住宅ローン「フラット35」を利用して購入した家に、住宅ローンが残っていても売却できます。住宅ローンの残りを全額返済して、設定された抵当権を抹消すれば問題なく売却できます。
「フラット35」のローンが残っている家を売却する方法は3つあるので、順番に解説します。
全額繰上げ返済して売る
もし手持ちの資金に余裕があるなら、住宅ローンを全額繰り上げ返済し、抵当権を抹消して家を売却できます。
先にローンを完済しておくメリットは、売却活動に余裕が生まれることです。家を売ったお金でローンを返す場合、もし売却価格が下がってしまうと、足りない分を自己資金から出さなければなりません。しかし、先に完済していれば、買主から価格の値下げ交渉があったとしても、気持ちにゆとりをもって売却を進められます。
売却代金で住宅ローンを完済して売る
住宅ローンが残っている家を売る一般的な方法は、売却で得たお金をローンの返済に充てることです。これは「フラット35」などのローンの種類に関わらず同じ考え方になります。
家を売った金額が住宅ローン残高より高ければ、ローンを全額返済できます。残ったお金は自由に使えますが、売る際にかかる諸費用として売却額の4〜6%程度が別途必要になります。
もし売却額がローン残債を下回った場合、足りない分は自己資金を用意すれば抵当権を抹消できます。
売却代金で完済できず、今後も返済できないなら任意売却
家を売ってもローンを返しきれず、今後の支払いも難しい時は、「任意売却」を検討します。
任意売却とは、ローンを貸している金融機関の許可を得て、担保設定された権利を外してもらって家を売る方法です。
任意売却のメリットは、残った借金を無理なく分割返済できるよう調整してもらえたり、残債や滞納利息を圧縮(減額)してもらえることです。また、売却に必要な仲介手数料や登記費用を売却代金の中で処理できます。さらに、競売と比べて市場価格に近い金額で売却できるため、残った借金を大きく減らせます。
ただし、任意売却をするには住宅ローンを滞納した結果、事故債権化していることが必須条件なので、その過程で信用情報に事故登録(いわゆるブラックリスト)される点がデメリットになります。
詳しくは「任意売却の7大デメリット 」でわかりやすくお伝えしています。
売却の流れ
住宅ローン返済中の家を売る際の流れは、組んでいるローンの種類(フラット35や変動金利など)に関わらず、ほとんど同じ流れで進みます。
住宅ローン残高を確認する
まず、現在借りているローンの正確な残高を知る必要があります。家を売るためには、原則として残りのローンをすべて返し終わらなければなりません。ローン残高は、毎年年末に届く残高証明書や、借りたときにもらった返済計画表で確認できます。これらが見つからない場合は、金融機関に直接問い合わせて確認できます。
家がいくらで売れるか確認する
ローンの残高が分かったら、次は自宅がいくらで売れそうか、不動産会社に調べてもらう「査定」を行います。不動産会社が出す金額が適正か確かめるために、自身でもおおよその相場を知っておくと安心です。近所にある築年数や広さが似ている家の値段をインターネットで見てみましょう。さらに、公的な情報である「不動産取引価格情報検索」などで、過去の取引例も調べられます。自分で相場を調べるのが難しいときは、3社以上の不動産会社に査定を依頼しましょう。
ローンを組んだ銀行に連絡する
繰り上げ返済をする場合や、売却代金でローンを返す場合、家についている担保(抵当権)を消す手続きが必要になるので、銀行に連絡してください。たとえばフラット35の場合、繰り上げ返済の手数料はかかりませんが、返済の申し込みはだいたい1ヶ月前までと決まっています。
不動産会社と契約して売却活動を始める
家をなるべく高く売りたい場合は、もっとも熱心で現実的な査定額を出した会社と、「媒介契約」を結びます。契約を結ぶと、不動産会社が買い手を探すための活動を開始します。買い手が見つかったら、家の「売買契約」を結び、その後、家の引き渡しと決済を行います。
ローンを返し終えて担保を消す
決済が完了したら、受け取った売却代金や自己資金で、残っている住宅ローンを返済します。すると、銀行から担保(抵当権)を消すための書類が渡されます。その書類を司法書士に渡せば、家の名義を買い手に変える「所有権移転登記」と、銀行の担保を消す「抵当権抹消登記」を済ませてくれます。
住み替えでフラット35を利用する際の注意点
現在の家を売って新しい家を買う「住み替え」の際、新しい家でフラット35のローンを組むときは注意が必要です。2020年4月1日からルールが変わったため、以前よりも審査が厳しくなっています。主な変更点は2つあり、ローンの年間合計額の計算方法が変わったこと、フラット35の二重借入れが禁止になったことです。
1.ローンの年間合計額の計算が厳しくなった
新しいルールでは、あなたが年に返済するローンの合計額が、年収に対して決められた割合を超えないか(総返済負担率)を厳しくチェックされます。年収400万円未満なら30%、400万円以上なら35%が上限です。例えば、年収500万円の人は年間225万円までが上限です。この合計額には、自動車ローンや教育ローン、クレジットカードの分割払いなど、フラット35以外のすべての返済額が含まれます。
特に住み替えの際に大きく変わったのは、すでに借りている住宅ローンの返済額も合算されるようになったことです。これまでは、新しい家のローン審査では、古い家のローンは計算に入れなくてもいい特例がありました。しかし、新しいルールでは、あなたが住んでいた古い家を賃貸に出す場合や、二軒目の家として持つ場合、古い家のローンの年間返済額も新しいローンに合算されます。
例えば、古い家のローンの年間返済額が100万円、新しい家の返済額が200万円だとすると、合計の300万円で審査されます。もしこの300万円を上限35%に収めようとすると、約860万円以上の年収が必要になります。
さらに、現在の自宅を売っても住宅ローンが残ってしまう場合、その残ったローン(残債)は、新しく借りる住宅ローンに影響します。たとえば、時価2,000万円、ローン残高2,500万円の家の場合、家を売っても500万円の残債が残ります。この状態で、新居のために2,500万円の住宅ローンを組もうとした場合、金融機関の審査では、新しく借りる2,500万円に、既存ローン残債2,500万円も加わり、審査対象の合計借入額は5,000万円と判断されます。その結果、総返済負担率が高くなり、希望の借入が難しくなります。
【フラット35の場合の特例】
ただし、フラット35の審査では、「売却予定の住宅に係る住宅ローンの取扱いの見直し」という特例があります。この特例を利用し、残る500万円の残債を自己資金や他の新規借入で賄うことが確認できれば、既存の住宅ローン(2,500万円)の年間返済額を総返済負担率の計算から除外できます。これにより、審査対象の返済額が新しいローンのみとなり、希望の借入をしやすくなります。
2.フラット35の二重借入れが禁止に
住宅ローンは、金利が低く設定されている代わりに「自分が住むための家」を買うことだけに使えます。そのため、あなたが住んでいた家を、転勤や住み替えをきっかけに人に貸す(賃貸にする)場合、その家は「住むための家」ではなくなります。
その結果、賃貸に出している、または出す予定の古い家の住宅ローンは、アパートローンなどの「事業用のローン」に切り替える必要があります。アパートローンは住宅ローンよりも金利が高くなることが多く、家賃収入などの収益性も審査の対象になるため、審査のハードルが上がります。住み替えで新しい家を買う際は、古い家のローンをアパートローンに変更するための手続きもあわせて行う必要があります。
まとめ

結論として、フラット35を返済中の家でも売却できます。
一般的な住宅ローンと同じように、家を売った代金で住宅ローンを完済できれば抵当権を抹消でき、売買取引を完了できます。もし家の売却額がローン残高を下回る場合は、足りない分は自己資金を充てて返済しなければなりません。
もし、ローンの支払いが難しくなってきたら、まずは借入先の金融機関に相談するか、住宅ローン問題の専門会社に相談してください。相談が遅れると、最悪の場合は任意売却できなくなり、最終的には競売になって強制退去させられます。
なお、私たち「任意売却119番」は、住宅ローン問題のプロフェッショナルです。金融機関と借金の交渉から売却の手続き、売却後の生活再建までサポートします。
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