自己破産で家はどうなる?競売と任意売却の選択肢と正しい手続き
住宅ローンの延滞3ヶ月目と、消費者金融からの借入が400万円となり、多分競売にかけられることになりそうです。こんな状況ですので、最終的には自己破産になると思うのですが、このような場合でも任意売却をする意味はあるのでしょうか?
同じ結果になるなら、このまま競売にかけられた状態で自己破産をした方が楽だと思うのですが…。どうせ取られてしまう家のためにジタバタするのはなんだかバカらしい気がします。

「自己破産をすれば自宅は処分されるのだから、わざわざ任意売却をする意味がない」というお考えになる方もいらっしゃるでしょう。自己破産する場合は不動産を持ち続けることはできませんから、ご自宅が人手に渡ってしまうと言う意味では任意売却も競売も違いはありません。
しかし、競売を待ってから自己破産するより、任意売却してから自己破産したほうが金銭的にもメリットが大きいです。ここから、競売と自己破産の関係をわかりやすく整理しながら、「どの順番で進めるのが良いのか」をお伝えします。
なお、任意売却の全体像を知りたい方は、「任意売却とは?仕組みをわかりやすく解説」をご覧ください。

- この記事の監修者
- 富永 順三 任意売却119番・代表コンサルタント
- 宅地建物取引士
20年の経験を持つ専門家が、解決策を無料でご提案します。
自己破産と競売の関係
競売と任意売却の違い、メリット・デメリット
自己破産すると、家は必ず競売になるわけではなく、主に以下の2つがあります。
| 処分方法 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 競売 | 裁判所主導で強制的に売却される | 手続きをすべて裁判所任せにできる(ご自身での手間は少ない)。 | 売却価格が安い(市場価格より2〜3割安)。 引っ越し時期を選べない(強制退去の可能性がある)。 ご近所に競売であることが知られてしまう。 |
| 任意売却 | 債権者(銀行など)の合意を得て、一般の市場で売却する | 高く売れる(残債を減らせる)。 引っ越し費用を交渉できる。 引っ越し時期を調整しやすい。 |
債権者との交渉や売却活動が必要(専門家が代行します)。 |
ご覧の通り、任意売却の方が、残債を減らせる可能性が高いこと、そしてご自身の都合で引っ越し時期を調整しやすいため、再出発に向けた準備がしやすいという大きなメリットがあります。
▶ 関連記事:任意売却と競売の違いは?メリット・デメリットを図解で徹底比較
破産手続と競売の関係
「自己破産」の手続きと、「競売」の手続きは、実は法律上は直接関係のない、別々の手続きとして進みます。
- 競売:住宅ローンの滞納によって、銀行が担保権を行使する手続き。
- 自己破産:多重債務全体を解決し、支払い義務を免除してもらう手続き。
自己破産をしても、銀行がすでに競売を申立てていれば、競売はそのまま進みます。
住宅ローン残債の取り扱いについて
家を売却した後、住宅ローンが残ったらどうなるの?
家を売却した金額が住宅ローンに充当されても、全額返しきれず、ローンが残ってしまうことがあります。この残った借金を「残債(ざんさい)」と呼びます。
この残債は、売却が終わった後も、引き続きあなたの借金として残ってしまいます。
しかし、競売や任意売却後も残ったローン債務は、その後の自己破産の手続きで免責(めんせき)される(支払い義務がなくなる)ことが、自己破産の最大のメリットです。
▶ 関連記事:任意売却後の残債は免除される?払えない時の対処や時効について解説
自己破産を回避する方法はあるのか?
最もシンプルなのは、家を売却した金額で住宅ローンを完済できる場合です。
任意売却などで住宅ローン残高よりも高く売れれば、他の借金がない限りは自己破産する必要はありません。
このため、任意売却119番では、お借り入れが住宅ローンのみの方には、自己破産は慎重にしていただくようご提案をしています。多重債務の方でも、債務を圧縮して無理のない範囲で返済できないかなど、あらゆる可能性を検討し、ご提案します。
▶ 関連記事:収入が減って住宅ローンが払えない中で競売回避した事例
自己破産と競売(任意売却)、どれを先にすべき?
次の4パターンの中で、どれが「一番良い」かは、あなたの現在の状況や、何を最も重視するかによって異なります。
- 自己破産してから競売
- 競売になった後に自己破産
- 自己破産してから任意売却
- 任意売却してから自己破産
ただし、多くの専門家が推奨し、最も有利になりやすいパターンは、通常以下のようになります。
1位:任意売却してから自己破産
費用面、時間面、そして売却条件面で最も有利になりやすいのが、任意売却してから自己破産です。
| メリット | 詳細 |
| 費用の節約 | 不動産がない状態で破産を申し立てられるため、手続きがシンプルで費用が安い「同時廃止」になりやすい。(3万程度で済む) |
| 残債を最小限に | 競売よりも高値で売却できるため、住宅ローンの残債(借金)を最も少なくできる。 |
| 引っ越し準備 | 引っ越し時期を調整しやすく、引っ越し費用も出る可能性がある。 |
2位:自己破産してから任意売却
これが、競売開始前に時間的な余裕がない場合や、債務(借金)整理を最優先したい場合の次善策です。
次の2つは、状況によっては避けられない・次善の策となるパターンです。
3位:競売になった後に自己破産
これは、競売の手続きがすでに進んでしまい、もう止めることができない場合に、最終的に残された選択肢です。
4位:自己破産してから競売
これは、一般的に「失敗した順番」と見なされやすいパターンです。
| デメリット | 詳細 |
| 費用が高い | 不動産がある状態で破産を申し立てられるため、手続きが煩雑で費用が高い「管財事件」になる。最低50万円の予納金(管財人費用)と代理人(弁護士)への費用も別途必要。 |
| 残債が多い | 任意売却よりも安値で売却になる可能性が高い。住宅ローンの残債(借金)が多く残りやすい。 |
| 手続きが長期化する | 管財事件になると、管財人が不動産や財産を調査し、換価(売却)を進めるため、免責決定まで半年〜1年以上かかることもある。 |
| 引っ越し準備 | 引っ越し時期は調整できず、引っ越し費用は1円もでない。 |
もし管財人が任意売却を試みず、不動産が債権者に引き継がれ、そのまま競売になれば、高額な予納金を払って管財事件にした意味が薄れます。
まずは、「任意売却してから自己破産」を目指せるかどうかを判断するために、お早めに専門家にご相談いただくことを強くおすすめします。
手続き全体と弁護士について
自己破産の手続き中に任意売却は可能なのか?
はい、可能です。
家がある状態で自己破産を申し立てると、「破産管財人」という弁護士が裁判所から選任されます(管財事件)。この破産管財人が、あなたの財産を管理・処分する役割を担います。
この管財人が、競売よりも有利な任意売却を積極的に進めてくれるケースがあります。管財人主導で任意売却が進められるため、手続きは少し複雑になりますが、競売を回避できるチャンスは生まれます。
▶ 関連記事:任意売却すると、自己破産となるのか?
弁護士に相談するタイミングと弁護士の役割について
以下の理由から、なるべく早めに相談することをおすすめします。
- 債権者(銀行など)からの取り立てをすぐに止めてくれる。
- あなたの借金と資産の状況を総合的に判断し、自己破産と任意売却のどちらを先にすべきか、最適な順番をアドバイスしてくれる。
- 特に、競売を避けたい場合は、任意売却専門の不動産会社と連携している弁護士に相談すると、手続きがスムーズ。
詳しくは「弁護士に相談」をご覧ください。
自己破産しても生活は立て直せる?
「自己破産をしたら人生終わり」なんてことは決してありません。自己破産は、国の制度として認められた、再出発のための手続きです。
破産後の生活・仕事・信用情報の回復まで
- 生活について
破産後、生活に必要最低限の財産(家具や家電、一定額の現金など)は手元に残せます。家を失っても、生活そのものができなくなるわけではありません。 - 仕事について
自己破産を理由に、会社をクビになることはありません。ただし、手続き期間中、一部の資格(弁護士や警備員など)は制限を受けますが、免責が決定すればすぐに復権し、仕事も続けられます。 - 信用情報(ブラックリスト)について
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます(いわゆる「ブラックリスト」)。
新しい借金やクレジットカードの作成は、約5年〜7年間は難しくなりますが、これは健全な生活に戻るための大切な「リセット期間」だと捉えてください。期間が過ぎれば、またローンを組めるようになります。
▶ 関連記事:任意売却するとブラックリストに載る?信用情報への影響をプロが解説
専門家に相談して「再出発」する人が多い理由
自己破産や競売、任意売却といった手続きは、法律が絡むため非常に複雑です。一人で抱え込まず、弁護士や任意売却の専門家などの力を借りることで、精神的な負担も軽くなり、最適な解決策へと早くたどり着くことができます。
なお、任意売却119番は弁護士と提携しており、無料相談も可能です(目安1時間/要予約)。詳しくは「弁護士に相談」をご覧ください。
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任意売却の基礎知識を知りたい方へ
任意売却の基本的な仕組みなどは、こちらをご覧ください。
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