競売後に余ったお金はどうなる? 剰余金を確実に受け取る手続と注意点
競売が終わり、不動産が売却されると、「もう何も残らないのでは……」と不安に思われるかもしれません。
ですが、実は売却代金がすべての借金を上回った場合に、あなたのもとへお金が戻ってくる可能性があるのです。それが、今回お話しする「剰余金(じょうよきん)」です。
この記事では、「競売後に余ったお金はどうなるの?」という疑問に対し、元所有者であるあなたが損をせず、確実にお金を受け取るための仕組みと、大切な注意点を分かりやすく解説していきます。

- この記事の監修者
- 富永 順三 任意売却119番・代表コンサルタント
- 宅地建物取引士
- 運営元:任意売却支援機構株式会社
- 会社概要:運営事業者情報
- 経験年数:創業20年 / 年間相談件数3,000~5,000件
- メディア実績:日本経済新聞、テレビ朝日 羽鳥慎一モーニングショー、NHKクローズアップ現代+など
- ・8割以上の方が相場に近い価格で売却に成功
- ・売却後の残りの返済額:月10,000円前後の方が多数
- ・くわしい経歴→富永順三のプロフィール
目次
競売で家が売れた後、余ったお金はどうなる?
まずは、競売が完了した後に「お金が余る」というケースについて見ていきましょう。
落札価格がローン残高を上回った場合の扱い
競売で落札された価格が、住宅ローンなどの債務よりも高かった場合、その差額が「剰余金」となります。 たとえば、ローン残高が2,000万円で、2,200万円で落札されたとしましょう。 この場合、差額の200万円が剰余金となり、最終的に元の所有者へ返還されます。
ただし、他にも税金の滞納や、カードローンなど別の債務がある場合、そちらに優先して充当されることがあります。
裁判所による配当手続きの流れ
剰余金が発生した場合、お金が戻ってくるまでには、裁判所が間に入って行う「配当手続き」という流れがあります。
- 売却代金の確定: 落札者が代金を全額支払います。
- 配当表の作成: 裁判所が、誰に、いくら支払うべきか(債権者への支払い額や、元所有者への剰余金)を計算し、「配当表」という書類を作ります。
- 配当期日の開催: 裁判所で関係者(債権者や元所有者)が集まり、配当表の内容が確認されます。
- 支払い: 配当表に従って、お金が各債権者や元所有者に支払われます。
この手続きを経ることで、公平かつ確実に、お金が配分される仕組みになっています。
余剰金(剰余金)はいつ・どのように受け取れるのか
剰余金を受け取れるタイミングは、「配当期日」の当日になります。
この配当期日は、競売の手続きが始まってからおおよそ5~7ヶ月後に開かれることが一般的です。
受け取り方法としては、裁判所から指定された口座に振り込まれるか、裁判所に出向いて現金で受け取るかのどちらかになります。
事前に、裁判所から配当期日のお知らせと、受け取りに関する手続きの案内が届くので、内容をよく確認してくださいね。
逆に、売却代金がローン残高より少ない場合は?
競売では、残念ながら、落札価格が住宅ローンの残高に届かず、お金が余らないケースの方が実は多いのが現状です。
では、この「足りなかった分」はどうなるのでしょうか。
残債(差額)は誰が支払うのか
落札価格がローン残高を下回った場合、その差額が「残債」となります。 たとえばローン残高2,000万円、落札価格1,500万円なら、500万円が残る計算です。
この残債は、引き続き元々の所有者(あなた)が、お金を貸していた債権者に対して支払っていく義務を負うことになります。
競売が終わった後も、債権者からの督促や一括返済の要求が続くことになりますので、残債の処理についても早めに考えておく必要があります。
任意売却なら「残債減額交渉」が可能なケースも
もし、まだ競売の開札日(かいさつび)を迎えていない状況でしたら、「任意売却」という方法を検討してみてください。
任意売却とは、債権者と話し合いながら、市場に近い価格でご自宅を売却する手続きです。
この任意売却であれば、売却後に残ってしまった残債について、毎月の返済額を無理のない金額に減らしてもらったり、返済を待ってもらったりといった交渉ができるケースもあります。
▶ 関連記事:任意売却後の残債はどうなる?払えない時の対処や時効について解説
競売でお金が余るケースは実際どれくらいある?
「剰余金」という言葉を聞くと、少し希望が持てるかもしれません。
しかし、実際には競売でご自宅が売却される際、お金が余るケースは決して多くはありません。
地域や物件種別による落札価格の相場
競売での落札価格は、市場での相場価格の7割程度になることが多いです。これは、競売物件は事前に内覧ができないことや、買主側で所有者との立ち退き交渉などの手間がかかるため、市場価格よりも安く設定されるためです。
【剰余金が発生しやすいケース】
- 住宅ローンを借りてからの年数が長く、残債がかなり減っている場合。
- 不動産市場が非常に活発で、競売の競争率が高くなった場合。
- 物件の価値が、借り入れ当初の想定よりも大幅に上がっている都心などの人気エリアの物件。
特に最近では、不動産価格が高騰している地域では、ごく稀にですが剰余金が発生することもあります。
競売と任意売却で「手元に残る金額」が違う理由
もしご自宅の価値が高く、剰余金が見込める場合でも、「任意売却」で売った方が最終的に手元に残る金額が多くなる可能性が高いです。
なぜなら、任意売却では、競売よりも高い価格(市場に近い価格)で売却できるだけでなく、売却費用の中から引越し費用や当面の生活費などを債権者と交渉して控除してもらえるケースがあるためです。競売では、原則としてこのような費用は一切控除できません。
つまり、単に「お金が余るか」だけでなく、「いかに多く手元に残せるか」という視点が大切になってきます。
▶ 関連記事:任意売却と競売の違いは?メリット・デメリットを図解で徹底比較
余剰金の受け取りで注意すべきポイント
もし剰余金が発生したとしても、安心して受け取れるとは限りません。
受け取りにはいくつか注意点があります。
元所有者以外に債権者が複数いる場合の配分
住宅ローン以外にも、未払いの管理費や修繕積立金、あるいは別の借金(例えば消費者金融など)で、ご自宅に担保権や差押えが設定されている場合もあります。
この場合、発生した剰余金は、あなたに返される前に、それらの他の債権者への支払いにも充てられることになります。
複数の債権者がいる場合は、裁判所が法律に基づいて、優先順位をつけて配分を行います。
▶ 関連記事:任意売却では滞納したマンションの管理費はどうなるの?
税金・差押え・債権者からの請求で受け取れないことも
さらに注意が必要なのは、滞納している税金や公共料金についてです。
市町村などの行政機関も、未払いの税金がある場合、この剰余金に対して「差押え」をしてくる可能性があります。
結果として、剰余金は発生したものの、税金や他の借金の支払いに充てられてしまい、元所有者であるあなたの手元には一円も残らないという可能性も十分にあり得るのです。
競売で損をしないための対処法
競売は、ご自宅を失うだけでなく、その後の生活にも大きな影響を及ぼします。
任意売却に切り替えれば、費用控除や引越し代の交渉も可能
先ほどもお話ししたように、競売と任意売却を比較した場合、多くの面で任意売却の方がメリットが大きくなります。
任意売却であれば、
-
- 売却価格が高くなりやすい(市場価格に近い)
- 引越し費用や当面の生活費の交渉ができる
- 残ってしまった借金(残債)について無理のない返済計画を立てやすい
といった大きな違いがあります。競売が開始されても、開札日の前日までなら、任意売却に切り替えることは可能です。
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専門会社に早めに相談する重要性
競売を止めて任意売却に切り替えるには、時間的な猶予が限られています。
また、債権者との複雑な交渉や、複数の債権者がいる場合の調整も必要になるため、個人で対応するのは非常に難しいのが現状です。
「任意売却コンサルタント」のような専門家は、債権者との間に立って、状況が少しでも良くなるように交渉を進めることができます。
「競売の通知が来てしまったけれど、どうしたらいいか分からない」と不安に思われているなら、一刻も早く専門家に相談することが、損をしないための最善の策となります。
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