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住宅ローンを滞納、「競売開始」通知が…

放置してはいけない、金融機関からの連絡 ~任意売却のコツ~

「住宅ローンを滞納したまま放置していたら、裁判所から競売開始決定通知が届いた。一括で返せるお金はないけど、取り下げてもらえる方法を教えて。ローンは払えるから。」

時折、真顔でこんな質問を受けることがあります。

契約を結んで借りたローンを返さず放置したうえ、何の連絡にも応じない先を金融機関が再度信じることはありません。競売にかかっている以上、ローン契約を破棄しています。

競売を取り下げるには、ローン残金全額+遅延損害金+競売申立費用を一括現金で支払うか、債権者の同意を得て、任意売却などで家を手放すしかありません。

■「住宅ローンが払えない」は他人事ではない

フラット35を提供する住宅金融支援機構のデータ(※)によると、住宅ローンの融資を受けて、返済期間中に支払えなくなる割合は、2%台で推移しているようです。だいたい50人に1人が住宅ローンの返済を滞納している、という計算になります。

住宅ローンは一般的なローンに比べれば、金利が低く、長期間の返済期間を設定できるため、その他のローンなどよりはるかに貸し倒れが発生しづらい、と考えてもよいでしょう。もし、その”50人の1人”になってしまったら…?放置することなく、対応していきましょう。

(※)参考 リスク管理債権 – 住宅金融支援機構

ケース1:転職で非正規雇用に。減収で住宅ローンが払えない。

Dさん 50代 エンジニア 横浜市

<相談内容>

「特殊な分野のエンジニアをしていました。勤務先が私の所属する部署を閉じることになり、営業職への異動を命じられました。自分の仕事内容は変えたくなかったので、仕方なく転職したのですが、年齢のこともあるのか、どこも契約社員ならば採用、と言われました。転職後は収入がそれまでの3分の2くらいになり、副業で生活費を稼ぐことにしたのですが、無理がたたって入院するはめに。結局、住宅ローンが払えなくなりました。」

<相談と方針>

横浜市内の戸建てを住宅金融支援機構と関東年金からの融資で購入。住宅ローンは、金利の高い時代に借りたことが尾を引き、あと12年、2000万円の残債を月14万円のペースで払うものでした。住宅金融支援機構から「任意売却のすすめ」を受けていたこともあり、そのまま任意売却を進めることになりました。

<結果>

Dさん『あのまま配置転換に応じていたら…家も家庭(転職後に離婚)もそのままだったかもしれない、と思わなくはありません。でも、過去は変えようがありませんよね。自宅には、固定資産税の滞納により差押えがあったのですが、任意売却時に解消できました。今は治療に専念していますが、再就職は果たしたいと思います。残債務は債権者と私が直接交渉したのですが、任意売却の担当者からアドバイスを受けていたので、スムーズに終えることができました。」

ケース2:自営で建設業を営んでいたが、収入が不安定で競売開始決定を受けた

Oさん 50代 自営業 千葉県

<相談内容>

私の場合は、相談したのがすでに競売開始決定を受け、現況調査(※)も済んだ段階でした。その時はもうやけくそになっていて、家を取るなら好きにしろ、と開き直っていたんです。ただ、息子がおたく(任意売却119番)に相談して、担当者が家に来たのが最初でした。

<相談と方針>

滞納中も銀行からの連絡は放置していたOさん。担当者が連絡すると、「今頃連絡してきてもね。もう競売にかけたので、このまま進めます。」と、とりつくしまもありません。仕方なく、競売で処分するより明らかに有利な価格で購入する買主を探し出し、再度交渉を続けました。Oさんの場合、健康保険料などの滞納による差押えもあったのが、さらに解決を難しくしていました。

<結果>

自宅はOさんが懇意にしている不動産業者に買い取ってもらい、向こう2年間だけの定期借家契約でリースバックを受けることになりました。

「銀行の連絡を放置していたのは、対応の仕方が分からなかったんだよね。」と、Oさん。実は、このように対応をせず、ギリギリまで放置なさる方も少なくありません。

病気やケガなど、どんな理由であれ、ローン契約を結んでいるのに、支払いをしていないのは契約違反です。せめて、「払いたいのだが、工面できない。」など、事実だけでも伝えておくべきです。金融機関のなかには、心証の悪い債務者の任意売却を認めない、というところもあります。

※現況調査:裁判所が競売などにかかった物件の算定をするために、現地へ赴き、状態を確認・撮影し、債務者にヒアリングなどをすること。

ケース3:個人再生の住宅ローン条項特則まで受けたのですが…

Hさん 40代 元会社員(今はフリーランス) 愛知県

<相談内容>

子がある分野で才能を発揮しています。最初はお稽古でしかなかったのですが、結果を出されると、かかる費用がどんどん莫大なものになっていって。その費用に糸目をつけるなんてできないじゃないですか。生活が苦しくなってカードローンやフリーローンを使ってしのいでいました。ついには個人再生の住宅ローン条項特則を受けて、積もり積もったカードローンなどは整理したんです。でも、再生計画が終わるとすぐに破綻しました。ブラックリストに載っているので(※)借りられる先がないからです。

<相談と方針>

Hさんは債務整理の一つである個人再生をした際は、会社員だったので、再生計画自体はスムーズに通ったようです。結果、借金は大幅に減って、自宅は守れたかに思えました。しかし、一旦債務整理をしてしまうと、あらたに借入をすることができません。再生計画中は問題ないものの、計画が終わると新たな借入れに頼ることなく、住宅ローンを払っていかなければなりません。Hさんは再生計画が終わるとフリーランスになり、ほどなく住宅ローンを滞らせてしまったのです。

<結果>

家を守ろうと個人再生を援用したのですが、住宅ローンが払えなければ結局、家は手放すことになります。Hさんはリースバックを強く希望していましたが、物件の価格と家賃の折り合いがつきませんでした。フリーランスでの収入があまりないことも家主が敬遠した理由のひとつです。Hさん家族は奥様の実家に移り、再起を図ることになりました。

(※)ブラックリスト…通称です。実在はしていません。個人のお金の取引履歴や借入額などの記録を総称で信用情報と呼んでいます。ブラックリストはそのなかで、一定回数以上の延滞履歴や債務整理事由が登録されてあり、”新規与信不可(新たにローン契約を認めない先)”として扱われています。

■任意売却やリースバックは必ずしもできるわけではない

★任意売却ができない理由TOP5

1)所有者や連帯保証人の同意がない

特に共有者や債務者(保証人)が元夫婦で、音信不通である。離婚後は一切関わりたくない、という場合で、双方に責任のあるローンについて折り合いがつかない、など。

2)債権者や仮差押えをつけた役所などの同意が得られない

税金関係の差押えに多いのですが、特に地方税は対応が厳しい自治体が多くあります。多額の未納税がある場合、延滞税を含めて全納付しない限り任意売却を認めないケースもあります。

3)物件が売れない

不動産も市場では商品です。一般的な居宅のほうが、工場より買い手が多いこと、不便な場所より便利な場所のほうが売れやすいのは当然です。また、物件の状態も売れ行きに影響します。

4)時間がない

特に競売にかかった後にはじめて任意売却をする場合、”時間切れ”となることがあります。早めに相談いただければ、問題なく任意売却できたであろうに…というケースも時折見受けます。任意売却は通常売却に比べ、手続きに時間がかかります。早めの相談で、時間を稼ぐこともできることが多いものです。

5)所有者に意思能力がない

高齢化社会を迎え、所有者や連帯保証人などが意思能力を失っており、売買契約などができないケースもあります。家庭裁判所で法定後見人などを選定したうえで売買に入るには、半年以上かかることもあります。その間住宅ローンの支払いが止まっていて、契約が整わない場合、結局競売で処分されることもあります。

任意売却119番