突然の競売開始決定通知、任意売却可能ですか?
妻に任せていた家計管理。問題なく返済していると思っていた自宅へ競売開始決定通知が届いた…。
『銀行が貸すくらいだから、払えるはず』
Kさんは、”ゆとりローン”利用者です。
ゆとりローンとは、旧住宅金融公庫で(現在の住宅金融支援機構)平成12年まで販売していた住宅ローンの名称です。当初5年~10年間のゆとり期間は返済額を低く抑え、ゆとり期間終了後の11年目以降はその分を上乗せして返済する仕組みでした。
これは、定期昇給と終身雇用を前提とした商品でした。しかし、日本経済の変遷により平成12年には販売中止となっています。
このローンの特徴として、『最初だけゆとりがある』ことです。当初の5年は少ない支払いです。6年目に毎月の返済額がおよそ1.5倍程度に増加します。次に11年目からは、当初の2倍程度に返済額が上がります。金利も4%前後であることが多く、支払ってもなかなか借金が減りません。
Kさんの場合、支払い額が上がった時期はちょうどお子さんの高校・大学進学と重なってしまい、教育費もローンで借りたため、最終的に行き詰ってしまいました。結果、任意売却せざるを得なくなったのです。
ゆとりローンは借り換えが難しい
Kさん夫妻は「金利の安い先に借り換えができていればなんとかなったのに…。」と仰っておられましたが、審査が通った例はあまり多くありません。その理由は、他でローンが通らない先でも融資をしていたこと。不動産価格の下落による担保価値の減少などがあるでしょう。借り換えができるのは、「まとまった資金を差し入れることができる」あるいは「ほかの金融機関にとって取り込みたい客」であることが重要なのです。
競売開始後の任意売却は、時間との闘い
競売開始になってはじめて任意売却に取り組むことはできるのでしょうか。
『競売開始後でも任意売却は可能だが、時間との闘いである。』
開始決定後から入札までは、平均的に4カ月から半年程度あります。この間に債権者と交渉し、買主を見つけて家を引き渡すことになります。買主がローンを利用する場合は、審査や融資実行に時間がかかるため、かなりタイトなスケジュールです。
Kさんの場合は、無事に任意売却することができ、競売は取り下げとなりました。しかし、ゆとりローン利用特有の高止まりしたローン残高により、大きな借金が残りました。住宅金融支援機構は少額ずつの返済にも応じてくれるため、当面は返済を続けながら生活再建を目指すことになりました。