(63)任意売却専門の業者もたくさんあって、決め手が分かりません。
珠玉混合の不動産業界
不動産業界も個々の人間と同じく、海千山千です。不動産業の免許を取得していれば、どの業者でも任意売却を扱うことができます。つまり、任意売却の専門性や実績をどれだけ謳っていても、目に見える形で確認することは困難なのです。では、選定基準はどのように定めればいいのでしょうか。
1)やっぱり大手不動産業社が安心?
まず言えるのは「ネームバリューや大手系列の看板だけでは、当てにならない。」という点です。他社を批判したり、十把一絡げに総括することは控えるべきですが、大手不動産業者の多くは任意売却には積極的ではないか、実績は少ない傾向にあります。大手の安心感、そして系列金融機関との連携もあることから、物件価格帯が高くて流通性のよい物件の仲介依頼が入りやすいことから、どうしても手間のかかる任意売却は後回しになるか、相談者(持主)自身に対応させるよう求める傾向にあるようです。
2)地元業者なら安心?
「地元業者なら地域のことをよく知っており、周辺の顧客を掴んでいるはずなので、最も頼りになるだろう。」これは、ある面YESで反面疑問です。まず、地元密着型の意義がどこまであるのか。たしかに近くに居れば、買い手の内覧や何かあった際の往来はしやすいでしょう。だだ、その相談先が任意売却をしたことがあるのかどうか。あれば何件なのか。
少なくとも質問をした時に曖昧に『それは金融機関が考えるでしょう。』『自分で確認してください。』『大丈夫じゃないですかね。』といった応対がある場合は、要注意です。
3)“任意売却専門”を謳っていれば大丈夫か?
これは当「任意売却119番」にも当てはまりますので、公平性を期するために言及します。回答としては、「やはり担当者による」とするのが、誠実な回答となりましょう。任意売却は一般的な売却と以下の点で異なるため、任意売却に実績のある担当であれば、不動産売買や仲介において、広い見識があり、さまざまな提案ができると言えます。
<通常売却と任意売却業務の違い>
1.作業量や段取りに工夫が多く必要
2.物件や顧客に種々の事情や注意点があることがほとんど
3.担保割れ物件の売却は、金融機関をはじめ全関係者との折衝が必要
4.宅建業法はもちろん民法や商法、相続や被後見人制度にも知識が必要
任意売却業者チェックポイント
1)『ザ・不動産屋』ではないか?
相談を目的にしているのに、相談者の話や事情を察することをせず、業者目線での話しかしない相手とは媒介契約を結んではいけません。
”売ったらいくら、の売買にしか興味がない””早く売るには退去、リフォームを推す””媒介契約書の署名押印に執着する、契約解除させない”
2)都合の悪い話は流していないか
知らない、不誠実な業者は特に金銭面の話になると曖昧な説明をするか、実現性に乏しい話をしがちです。
「残債務はそのうち消える」「引越し代は〇十万約束します」「競売にはさせません」「残債はそのうち諦めます」このような説明をする相手には注意しましょう。
任意売却は交渉が整い、買い手が決まったうえで成立します。債権者との折衝や売却先も決まっていない段階で断言できることはほとんどなく、基本的な流れや説明以外は、取り組んでみないと分からないのです。
3)「手続きや交渉はすべて相談者がするものだ」と言っていないか
金融機関も行政も「本人からのお申し出でないと対応しません」とは言います。しかし、その本人了承のもと、一定の範囲内で委任や委託を受けた不動産業者が介入することは可能です。
<任意売却業者が行える手続きや交渉内容>
・任意売却にかかる全債権者との連絡や交渉
・物件の査定、売出、仲介
・役所との折衝(本人同伴の場合の同席もあります)
・物件調査(役所調査。一部は委任状取得のうえ行う。)
<まとめ>
売却後の相談者の行く末を気にかけているか?
任意売却をした後も相談者の人生は続きます。私たちは任意売却の相談を承る以上、どの方にも事情や都合があることは承知しています。相談者には、残債務についての対応はもちろん、家を売却した後の行き先があるのかどうかなども伺います。
不動産業者も接客業ですから、愛想がよかったり、親切そうな対応は心得ていることがほとんどでしょう。営業的な親切さと、親身さを切り分けて判断なさるのが賢明です。