夫が逮捕で住宅ローンが払えない!競売を避ける任意売却の手続きと成功事例
夫が逮捕され、住宅ローンの支払いが突然できなくなり、どうすればいいか途方に暮れていませんか?
非常に厳しい状況ではありますが、落ち着いて対処すれば、自宅が競売にかけられるのを避ける道は残されています。
この記事では、旦那様が逮捕・服役中の場合の住宅ローンへの対処法を詳しくご紹介します。

- この記事の監修者
- 富永 順三 任意売却119番・代表コンサルタント
- 宅地建物取引士
20年の経験を持つ専門家が、解決策を無料でご提案します。
目次
旦那が逮捕されて住宅ローンが払えない時の対処法
1. まずはローン契約者(銀行など)に正直に相談する
住宅ローンの支払いが困難になった場合、最もやってはいけないことは、銀行や保証会社からの連絡を無視することです。
滞納する前に、あるいは遅延が発生した直後に、現在の状況(ご主人の収監、収入の途絶など)を正直に伝えましょう。
それと同時に、リスケジュール(返済条件の変更)の相談をすれば、一時的に金利のみの返済にするなど、返済計画の見直しが可能にあることもあります。
ただし、収監期間が長期に及ぶと判断されると、根本的な解決策(売却など)を求められるケースが多くなります。
▶ 関連記事:住宅ローンのリスケジュールとは?
2. 連帯保証人になっているか契約内容を確認する
もし奥様が住宅ローンの連帯保証人になっている場合、ご主人様が逮捕されて支払い不能となったとき、残りのローン全額を支払う義務が奥様に移ります。
ローン契約書や金銭消費貸借契約書を確認し、連帯保証人の有無と、奥様自身の今後の支払い能力を冷静に判断する必要があります。
3. 自宅を売却して借金を清算する
返済の見込みが立たない場合、自宅を売却して残りの住宅ローンを清算するのが、最も現実的で前向きな選択肢となります。
売却方法を決める上で、最も重要なのが「売却額がローン残高を上回るかどうか?」という点です。
- アンダーローン: 売却額がローン残債を上回る場合(売却代金でローン完済が可能)
- オーバーローン: 売却額がローン残債を下回る場合(売却しても借金が残る)
まずは不動産会社に査定を依頼し、現在の市場価値を把握してください。
この結果によって、次に取るべき行動が「通常売却」か「任意売却」かに分かれます。
▶ 関連記事:任意売却と競売の違いは?メリット・デメリットを図解で徹底比較
所有者の旦那が逮捕されても自宅の売却は可能
所有者ご本人が収監中だと、「売買契約や本人確認ができない」と思われがちですが、ご家族などの協力者がいれば、売却は可能です。
収監先での面会や書面の差し入れなどを通じて、所有者本人の売却意思を確認し、委任状等の書類を準備することで、売却手続きを完結させた事例はあります。(後ほど紹介します。)
ただし、通常の売却よりも時間と専門的な手続きを要します。
最適な売却方法の選び方
アンダーローンの場合:通常売却が可能
査定額がローン残債を上回るアンダーローンの場合は、通常の売却が可能です。
- 銀行に売却の許可を得て、売却代金から住宅ローンを一括完済し、残ったお金は手元に残ります。
- この場合、売却自体は可能ですが、所有者が収監中のため「所有者不在の売却手続き」が必要となります。
通常売却できれば理想ですが、所有者不在の売却手続きは、通常の売却手続きよりも格段に面倒で、時間もかかります。
特に所有者が服役中・収監中の場合は、刑事施設特有の制約が加わるため、さらに複雑になります。
オーバーローンの場合:任意売却が必要
査定額がローン残債を下回るオーバーローンの場合、そのままでは銀行が抵当権を外してくれないため、「任意売却」という特別な手続きが必要になります。
- 債権者(銀行など)の同意と協力を得て、市場価格に近い価格で売却します。
- 競売よりも残債を大幅に減らせて、残った借金の分割返済なども交渉できます。
任意売却は、所有者が逮捕された場合によく利用されます。
所有者が服役中でも任意売却するには?
所有者が服役中の場合、任意売却の手続きは難航します。
一番の理由は、家を売る本人(所有者)との連絡や書類のやり取りが、刑務所の厳しいルールで制限されているからです。
通常の売却では簡単な「本人の意思確認」や「必要な公式書類」をそろえるのに、面会予約や郵送(検閲あり)、特別な証明書の手続きなど、時間と労力が非常にかかります。
また、弁護士は家の売却までは関与しないことが多いため、専門知識を持ったプロの協力が不可欠になります。
▶ 関連記事:任意売却をする際に弁護士に相談すべき場面
所有者が服役中の任意売却の手続きの注意点
刑務所や拘置所に入っている方と任意売却を進める際は、通常の手続きでは考えられないルールがあるため、以下の点に特に注意が必要です。
1. 面会は事前の予約と厳しい制限がある
司法書士などの専門家が所有者と面会するには、事前に日時を入所施設に予約する必要があります。
また、面会に行く前に、「なぜ面会が必要なのか」を示す資料や、面会する人の身分証明書、持ち込める物などについても、すべて施設に確認して許可を得なければなりません。
2. 書類のやり取りは原則郵送で制限される
手紙や書類のやり取りは、施設側のルールで厳しく制限されています。外部から直接書類を差し入れることは原則できません。
そのため、売買契約書などの重要な書類は、施設が内容をチェック(検閲)する郵送によってやり取りすることになり、非常に時間がかかります。
3. 書類への署名・押印は面会時にできない
面会したその場で、契約書や委任状に本人にサインや押印をしてもらうことは許されていません。
結果として、署名・押印も郵送で往復させる必要があり、手続きがさらに遅れる大きな原因となります。
4. 印鑑証明書の代わりに特別な証明が必要になることがある
不動産売買に欠かせない「印鑑登録証明書」は、住民票のある場所でしか発行できません。もし必要な書類が用意できない場合は、特別な方法が必要です。
委任状に受刑者本人が押した拇印(指紋)について、刑務所長などの責任者に「本人のものに間違いない」と証明してもらうことで、印鑑証明書の代わりとすることがあります。
これは、服役中特有の非常に特殊な手続きです。
5. 司法書士に手続きを任せる包括委任状がカギ
売買の最終手続きである「決済(お金のやり取り)」の際に、所有者本人が立ち会うことはできません。
そのため、司法書士を代理人とする『包括委任状』を事前に取得し、すべてを専門家に任せて手続きを進めることが前提となります。
ただし、委任状の日付が決済日より前になってしまうため、事前に法務局(登記所)に相談しておく必要があります。
体験談:夫が逮捕されて家を売却した事例
<所有者の逮捕と妻の病気が重なって>
R子さんの旦那さまS氏は不注意から重大事故を起こしたことで逮捕、裁判中でした。
S氏は仕事先を懲戒解雇となっているため、無収入。
妻で住宅ローンの連帯保証人でもあるR子さんが掛け持ちで働いてローンを返済していたのですが、無理がたたり入院。住宅ローンが払えなくなりました。
<相談>
R子さんから任意売却をしてほしい、との相談を受け、私どもも対応を協議しました。
S氏の国選弁護人に連絡を入れたところ、やはり任意売却については関知しない(関わらない)が、R子さんの状況とともに、自宅を売却せざると得ないことは本人(S氏)に伝えておく、との返事です。
そこでR子さんの体調回復を待って、収監先へ面会予約を入れるとともに、司法書士と連携して任意売却を進めることになりました。
<種々のハードルが…>
面会者の人数も制限を受けていることから、司法書士とR子さんで面会予約をし、任意売却についてS氏の意思を確認のうえ、今後の流れや必要書類について打ち合わせを行いました。
<債権者の理解とスムーズな任意売却>
問題は債権者への連絡が本人からできないことですが、銀行に事情を話したところ、司法書士による本人確認ができていること、連帯保証人であり、物件に居住している妻のR子さんの申出をあったことから、任意売却に応じていただけることになりました。
住宅ローンの滞納は始まったばかりで、通常は半年前後の滞納で販売が始まるところ、価格が市場価値程度なら、前倒しで販売しても良いことになりました。
R子さんは元気な時は収納整理や掃除についてブログなどで発信している方だったので、住んで10年近く経っているとは思えない状態です。
任意売却開始早々に購入希望者が続々と現れました。
結果、指値交渉が入ることなく任意売却ができる見込みとなりました。
S氏は住民票も当該マンションにあり、印鑑証明書登録もそのままであったことから、売買に必要な書類はR子さんを通じて取得できました。
窓口となるR子さんの尽力で非常にスムーズに任意売却がまとまりました。
<残債務は?>
今回のケースでは、S氏への請求は実質困難であること、R子さんは障害年金を受給する見込みです。
債権者は請求しても回収が難しいことから、S氏が社会復帰後、再就職した際に改めて相談をしましょう、ということになりました。
ただし、時効の中断を図るため、定期的に一括返済請求やR子さんへの連絡は引き続き行われます。
R子さんは、実家に身を寄せて療養しながらS氏が戻るのを待ち、二人で債務を返済していきたい、と考えています。
まとめ:所有者不在でも任意売却できる可能性はある
服役中の方の中には、任意売却の際に協力的なご家族がいない、住民票登録がない(イコール印鑑登録がない)といったケースも少なくありません。
特に、窓口になってくださる方がいないと、手続きは困難です。私どもから直接、収監先へは面会予約などができないためです。
特に本人確認書類や物件の鍵などは、ごく近しい関係者しか用意できないでしょうから、まずは関係者の協力の有無が大きなカギとなります。
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