2025/11/10(公開: 2020/05/13)
所有者が行方不明の家を売却できる?手続きをわかりやすく解説
「家の持ち主(所有者)が行方不明になってしまった…。この家を売ることはできるのだろうか?」
実は、家の持ち主がいなければ、原則として勝手に家を売ることはできません。
ですが、法律に基づいた手続きを踏めば、売却(処分)が可能になります。
この記事では、持ち主が行方不明の家を売るために必要な、たった2つの方法と、具体的な手続きの流れを解説します。

- この記事の監修者
- 富永 順三 任意売却119番・代表コンサルタント
- 宅地建物取引士
20年の経験を持つ専門家が、解決策を無料でご提案します。
はじめに:委任状は万能ではない
「実は、昔書いてもらった委任状があるのですが…」とご相談いただくことがあります。
結論から申し上げますと、たとえ所有者本人が書いた委任状や、権利証(登記済証)があったとしても、本人が行方不明で意思確認ができない状態では、その家を売却できません。
なぜ委任状だけでは売れないのか?「無権代理」の回避
不動産取引では、売買契約のときに「本当に本人が自分の意思で売ろうとしているか」を金融機関や不動産会社が必ず確認します。
- 法律上の問題: 法律には「無権代理(むけん代理)」という考え方があります。これは、売る権利がない人が、権利者(行方不明の持ち主)のふりをして勝手に契約を結ぶことです。
- リスク: もし後に本人が戻ってきた場合、その契約は「無効だ!」と主張されてしまいます。売買を信じて家を買った人(買主)に大きな損害を与えてしまうリスクがあるため、不動産取引では本人の意思確認が必須なのです。
だからこそ、本人の代わりとして売買の許可を得るために、裁判所の手続き(不在者財産管理人や失踪宣告)が必要になるのです。
1. 行方不明の不動産を売却するための2つの解決策
行方不明の所有者の不動産を売却するには、裁判所を通じて「法律上の代理人」を立てる必要があります。主な方法は以下の2つです。
① 持ち主が7年以上見つからない場合:失踪宣告
これは、行方不明の状態が長く続いたときに、家庭裁判所に「その人は死亡したことにする」と宣言してもらう手続きです。
- 期間:原則として、行方不明になってから7年以上の期間が必要
- 効果:失踪宣告が出ると、持ち主は法律上「死亡した」ことに。その結果、相続が始まり、相続人が正式に家の持ち主に。
- 売却:新しい持ち主(相続人)の名義に変更(相続登記)すれば、その相続人が家を売れる。
② 行方不明の期間が短い、またはすぐに処分したい場合:不在者財産管理人
これは、家庭裁判所に「行方不明の持ち主に代わって財産を管理する人」(管理人)を選んでもらう手続きです。
- 役割:管理人は、行方不明者の財産を減らさないように守り、家賃収入などがあれば管理する。
- 売却:家を売る行為は、財産を処分する行為なので、管理人が勝手にできない。裁判所から「家を売ってもいい」という許可(権限外行為許可)をもらって初めて売却できる。
- 手続きを行う人:家の売却に利害関係がある人(例:相続人、家の共有者、お金を貸している人=債権者など)が裁判所に申し立てる。
2. もし住宅ローンが残っていたら?
行方不明の所有者が借りた住宅ローンが残っている場合、手続きは少し複雑になります。
不在者財産管理人を立てて任意売却を目指す
「任意売却」とは、住宅ローンを貸した銀行などの了解を得て、裁判所の競売(きょうばい・オークション)になる前に家を売る方法です。
これにより、持ち主の借金を減らし、家が高く売れる可能性があります。
- 管理人の役割:不在者財産管理人を選任し、その管理人が銀行と交渉し、裁判所の許可を得て家を売却します。
- 難しさ:銀行は、競売の方が手続きが確実で早いと考える場合もあります。また、管理人は「行方不明者の利益」のために売却するので、借金(債務)の解決が優先される競売が選ばれるケースが多いのが現実です。
→ 競売を避けたい場合は、不在者財産管理人の選任申立てと同時に、銀行としっかり話し合いを進めることが重要です。
▶ 関連記事:任意売却と競売の違いは?メリット・デメリットを図解で徹底比較
3. 手続きにかかる期間と費用
どちらの手続きも、家庭裁判所での手続きが必要です。時間がかかるため、早めに準備を始める必要があります。
| かかる期間の目安 | 主な費用(実費・専門家費用を除く) | |
|---|---|---|
| 失踪宣告 | 1年~1年半程度 | 収入印紙、官報公告費用など |
| 不在者財産管理人 | 申立てから選任まで1~3ヶ月程度 | 収入印紙、予納郵券、予納金(数十万円~) |
※「予納金」は、管理人の報酬などに充てられる費用で、申立人がいったん裁判所に預けます。金額は財産の状況によって大きく変わります。
4. まとめ:売却は可能ですが「専門家」に相談を
所有者が行方不明でも家を売却する方法はありますが、どちらも家庭裁判所での複雑な手続きが必要です。
特に、「不在者財産管理人」を選任して売却する場合は、その後の税金や費用もかかります。
まずは、法律の専門家である弁護士や司法書士に現状を詳しく相談し、どの方法が最も良いかをアドバイスしてもらうようにしましょう。
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