任意売却は交渉が命!銀行と相談すべきポイントを解説

「住宅ローンが払えそうにないので、銀行へ任意売却の相談しておいたほうがいいでしょうか。」と聞かれることが多々あります。
しかし実際に銀行に相談に行ったら、銀行員から”任意売却とは何ですか?”と言われてしまった方もいるのではないでしょうか。
回答としては、『相談するのはお任せしますが、支払い計画の変更(リスケジュール)を促される可能性が高いでしょう。リスケジュールが断られると、弁護士相談を促されるでしょう。』となります。
この記事では、なぜ銀行は任意売却の相談をしにくいのか。その理由と相談する場合に確認すべきポイントについて詳しく解説していきます。
なお、任意売却の全体像を知りたい方は、「任意売却とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説」をご覧ください。

- この記事の監修者
- 富永 順三 任意売却119番・代表コンサルタント
- 大手企業、経営コンサルタント、阪神大震災復興支援NPО、経済振興財団、企業再生・М&A会社等を経て現職。中小零細の事業支援実績が認められ04年に中川大臣(故)より”経済産業大臣賞”を受賞。
- くわしい経歴→「競売体験者」だからわかります
目次
銀行が任意売却の相談に乗ってくれない可能性がある理由
その理由は、任意売却とは”ローン滞納を経て、担保割れで物件を売却すること”だからです。
そして窓口、つまり引き落とし口座を預かる金融機関の営業店は、あくまで「顧客との基本的なやり取り」を管理しています。
基本的なやり取りとは、口座の開設や引越しなどの異動登録、引き落としなどです。
つまり、一般的な業務のみ担っている窓口です。
営業店は融資元である、例えば住宅金融支援機構や日本政策金融公庫、保証会社などではないため、債権者としての判断や決定はくだせません。
何より、任意売却という仕組み自体知らない職員が多いのです。
それゆえ、任意売却イコール『これから住宅ローンを滞納するうえ、ローンを完済できないまま売却しますが、応じてください。』と交渉されても
- そんな対応はありません
- 他で借り入れるか、副業などをしてでも払ってください
といった回答となりがちなのです。
窓口金融機関の立場や役割を知っておくと、任意売却の際、だれが交渉相手となるのかが明確になるので、構図が分かりやすくなります。
リスケジュール(返済を見直したい)の場合は、窓口金融機関が相談先です。
審査は保証会社など“債権者”が行います。
そのため任意売却は、保証会社や競売を申し立てる部署に申し出るのです。
任意売却の意思を伝えるのは滞納後が大多数
では、任意売却をした人たちは、どのようなタイミングで任意売却の交渉をはじめたのでしょうか。
ほとんどの方は、住宅ローンの滞納がはじまり、金融機関から督促を受けるようになってからです。
払えない事実がある以上、今後はどうするのか?を伝えるほかないため、窓口担当者の対応がかえってスムーズである傾向にあります。
あるいは、
- リスケジュール(返済計画の見直し・リスケ)の交渉をした結果、審査に通らなかった
- リスケ条件が厳しくて応じられなかった
という経緯を経て、「任意売却をするほかありません。」と、切り出すこともあります。
なお、一部プロパー融資(プロパーローンといって、保証会社などを通さず直接融資を受けている場合があります。)
そのケースでは、任意売却の際、そのまま窓口営業店が交渉先となり、別会社(サービサー。銀行の代わりに借金を回収する専門会社のこと)に物件ごと債権譲渡されることがあります。
任意売却には債権者全員の合意が必要
任意売却は「債務者・債権者・買主」の三者の合意で成立します。
住宅ローンを貸した銀行以外にも、保証会社やサービサー、税金の差押えを行う自治体などが関係している場合があります。
1社でも同意しなければ任意売却は成立せず、競売に進むことになります。
そのため、どの債権者をどう説得するか(銀行交渉)が重要です。
なお、どの債権者も任意売却に協力する義務はありません。
「任意売却であれば、早期に高く債権回収できる。競売より有利だから交渉に応じるだろう。」と考えるのは早計です。
事実、
- そんな少額の回収のために抹消には応じられない
- そもそも規定により完済(完納付)以外応じることはない
というスタンスの債権者もおり、特に地方自治体はその傾向を強めています。
関連記事:任意売却とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説
任意売却で銀行と交渉すべき3つのポイント
続いては、任意売却で債権者と交渉する必要のある3つのポイントについて解説していきましょう。
抵当権の抹消
任意売却を成立させるには、担保権を持つすべての債権者の同意が必要です。
不動産業者が仲介し、第一抵当権者や後順位債権者に「担保解除料(通称ハンコ代)」を提示して同意を得ます。
自治体や管理組合の差押えがある場合も、配分で解除を交渉します。
物件の販売価格
任意売却は、できるだけ高く売ることを目指しますが、通常の売却のように見えても全く同じではありません。
価格について売主の希望にこだわると、かなり危険な賭けとなります。
相談例として、
- 住宅ローンが苦しいので、家を販売しているが、1年以上売れない
- 何社にも依頼しているが、全く反響がない
という方の多くは、通常売却を目指すあまり、市場価格を考慮せずにローンの残高以上で売り出しています。
なかには新築で買った値段以上で売り出している例もあります。
冷徹な事実として、ごく一部のエリアや物件を除いて、『中古物件を高く買いたい人はいない。』のです。
しかも任意売却は、現況有姿といって、リフォームなどを施さずに引き渡します。
所有者には見慣れた状態は、第三者からすれば全く違うのです。
競売を避けて売却するには、市場価格を理解する必要があります。
つまり「買い手はいくらならこの物件を購入するのか?」という視点です。
時間との勝負でもある任意売却物件は、市場と折り合う”時価”で売却を目指すことになります。
ただし、任意売却物件の価格は、債権者が決めます。
ここで市場価格よりも高い値段で売り出すよう指示が出てしまうと、購入者はなかなか現れません。
その際、時間があれば、最初は打診売りとして指示通りに販売を始めるほかありません。
反響が全くなかった、あるいは下値で価格交渉が入った場合はその報告をし、相場価格と差がないように調整を考えてもらうよう銀行と交渉できます。
常々『任意売却は、早めに相談してください。』という理由は、債権者と何度も交渉するためには、十分な売却活動期間が必要とするからに他なりません。
売却額の配分

買主が決まると、売却代金をどのように分けるかを決めます。
この作業を「配分」といい、債権者に対して「売却代金を分け合うので任意売却に同意してください」と交渉するため、配分表という書類を作成します。
配分には次の項目が含まれます。
- 売却代金
- 各抵当権のローン残高
- 売却にかかる諸費用(仲介手数料・司法書士費用など)
- その他の債務(税金滞納・管理費・修繕積立金など)
まず第一抵当権者の基準に従い、上記の配分案をまとめます。
その中には、後順位の抵当権者への「ハンコ代(担保解除料)」なども含まれます。
ただし、各項目には配分できる上限があり、滞納額が多い場合は全額を充当できないこともあります。
どうしても関係者が納得しない場合は、債務者本人が不足分を負担して調整するケースもあります。
本来、任意売却は持ち出し費用が不要ですが、関係者の合意を得るために一部の差入金が必要になることもあるのが実情です。
任意売却後の残債務交渉もサポート
任意売却は、売却価格がローン残高に届かない「オーバーローン」の状態で行う手続きです。
売却後に残った差額は「残債務」として借金に残り、債務者だけでなく連帯保証人にも支払い義務があります。
任意売却で最も不安が大きいのが、この残債務の扱いです。
売却後の生活を考えると、以前と同じ返済は現実的ではありません。
そのため、金融機関と「どのような条件で返済を続けるか」を交渉する必要があります。
ただし、法律上この交渉ができるのは債務者本人、または弁護士などの代理権を持つ者に限られます。
実際には、銀行とのやり取りや交渉の進め方に不安を感じる方がほとんどです。
任意売却119番では、直接交渉を代行することはできませんが、これまでの多数の相談事例に基づいて、適切な進め方や話し方を具体的にアドバイスしています。
- どう伝えれば銀行が理解してくれるのか?
- どの段階で弁護士に相談すべきか?
など、現実的な判断のサポートが可能です。
任意売却だけで終わらせず、その後の生活再建まで見据えた支援を行う。
それが、私たちが重視している相談対応の姿勢です。
残債務交渉のタイミングと進め方(債務整理を伴わない場合)
多くの債権者は、任意売却が決まると、「生活収支報告書」といった家計の収支明細を記入し、債権者に提出するよう求めます。
任意売却に至った方は、生活が苦しいものです。
収入金額を記載し、支出の欄に家賃などの生活費や医療費、その他債務もある場合はその明細と月々の支払額を記入します。
ほとんどのケースで決済時などに別室へ債務者だけが呼び出され、
- 当面は月々この金額を支払ってください
- 支払い方法はこのようにしてください
といった指示を受けます。また、合意書を交わすこともあります。
月々の支払額は、生活保護受給者や年金生活者、年収の低い母子家庭など、生活困難者である場合、月々数千円程度で済むことがあります。
一般的な給与所得者や自営業者などの有職者であれば、月々1万円から数万円で着地する傾向にあります。
このように、予め提出を受けた生活状況の報告書に不審な点がない場合は、無理のない金額で応じてくれることがほとんどです。
ただし、民間債権の場合、数年内にサービサーと呼ばれる新たな債権者に債権が譲渡されることがあります。
新しい債権者に変わった時、改めて交渉しなおすことになるので、いつまでも少額の支払いが続くとは限りません。
債権譲渡された場合も、新たな債権者と改めて上記の交渉をすることになります。
関連記事:任意売却後のローン残債はどうなるの?
まずは任意売却119番に無料相談を
引用:夢のマイホームにコロナが直撃・深刻急増する住宅ローン破綻
住宅ローンを払えない方や事業融資でお悩みの方から、実際に次のような相談が寄せられています。
- 住宅ローンの支払いが難しくなった
- 事業融資の返済を滞納している
- 親子・元夫婦間でローンを組み替えたい
- 投資物件が赤字続きで手放したい
任意売却119番は、そんな方が思い立ったときにすぐ相談できる窓口を目指しています。
電話・メール・LINE・対面など、どの方法でも相談は無料・年中無休で受け付けています。
状況が整理できていなくても構いません。まずは現状をお話しいただくだけで、最適な進め方を具体的にご案内します。
関連記事:
