(47)任意売却する前に連帯保証人から外れたい
一旦、借金の連帯保証人になってしまうと、完済まで責任がつきまといます。途中で連帯保証人から抜けることは簡単ではありません。私どもは任意売却を中心にご案内しておりますので、連帯保証人を外れたい場合、直接金融機関にお問合せ・交渉ください。
なお、ここでは連帯保証人と連帯債務者を同じ立場として説明しています。厳密には違う立場ですが、今回は区別して説明する意義があまり見いだせないため、「連帯保証人」とまとめています。
連帯保証人とは、最も損な立場です
『借りてもいないお金の責任は、借りた人と同じ。』
これが連帯保証人です。一旦なったら最後まで返しきらない限り、借りた人と同じように返す義務を負っています。しかも、借りた本人ではないため、債務者本人のような交渉が当初からできないことも多々あります。
主債務者が借金を返さなくなり、連帯保証人が主債務者の財産を売却して返済の原資に充てようとしても、所有者ではないので、ままなりません。
つまり、金融機関から督促を受けた際は、身銭を切るしかないのが連帯保証人なのです。
保証人を依頼された場合、”連帯”と名がつくからには『完済まで借りた人と一蓮托生』という理解のもと、応じるべきです。
参考サイト:
離婚するのですが、住宅ローンの夫婦間での連帯保証人はどうなりますか?
連帯保証人から外れるには
『連帯保証人が亡くなったら、代わりの人を立ててください。』
これが金融機関の基本的な姿勢です。
連帯保証人を外すということは、滞納リスク時に責任を追及する先を減らす、という意味です。金融機関にとっては、一旦結んだ貸金の契約を変更する手間をかけることも、回収リスクを高めることも応じたくはないはずです。
★金融機関のメリットを考えましょう
そのため、ただ『連帯保証人をただ抜けたい。』と言っても、万が一(滞納)のことを考えてつけた連帯保証人です。主債務者との離婚や無収入になった、など、連帯保証人の都合や希望で外せるわけではありません。
時々、弁護士に頼んだり、裁判をすれば、連帯保証人から抜けられるのでは、と考える方がいますが、実現性の低い話です。弁護士に相談しても「できませんね。」「自己破産をすれば、連帯保証した借金は消えますよ。」と言われるくらいではないでしょうか。
連帯保証人を外れたい、と考えるならば、”相手がどのような条件なら外しても問題がないか?”を考える必要があります。『夫の家だし、私は妻ではなくなるので連帯保証人を外してください。』といった一方的な持ちかけはほとんどの場合、するだけ無駄なことは自明の理です。
これで外れた! 連帯保証から外れる方法
これまでの説明の通り、連帯保証人から抜けるのは簡単ではありませんが、絶対にできないわけではありません。
以下に体験談を交えて連帯保証人から抜けた方々の方法を案内しますので、ご自身で最も実現性の高そうなものを見つけられば、連帯保証人から外れることも可能でしょう。なお、借金を全額返済(完済)してしまうは手法とは言えないため、省略します。
連帯保証人を外せた実際のケース
ケース1:交渉で外せた
★あゆみさん 30代 滋賀県
『夫の事業資金の連帯保証人だったのですが、離婚時に義弟に替わってもらいました。』
信用金庫との交渉。元夫の事業資金借入3500万円について連帯保証人となっていた。夫と離婚をする際、夫の会社の役員であった義弟に連帯保証人を代えてらった。なお、会社運営はうまくいっており、事業資金の返済や法人の財務内容には懸念はなかったためか、比較的スムーズに手続きが終わった。
★恵以子さん 40代 福岡県
『家の住宅ローンの連帯保証人でした。義両親の家を追加担保とし、私は連帯保証人ではなくなりました。』
地方銀行借入。もともと姑と折り合いが悪かったうえ、元夫がうつ病気味になったことを私の責任だと責められて、義両親の求めで離婚しました。離婚に応じる条件として、夫の住宅ローンの連帯保証人を外してもらうよう要求しました。
銀行にとって何のメリットもない変更では応じてもらえる様子がなかったため、夫の両親の家を共同担保に入れたうえ、義父が連帯保証人となってその立場を外れることができた。
★文香さん 30代 京都府
『家の価値が住宅ローンの残高を超える程度の額を繰り上げ返済することを条件に、連帯保証人から外してもらいました。』
組合員系の金融機関借入。住宅ローン残高2500万円に対し、家の価値は同じ程度でした。夫の不貞行為で別居することになり、将来に対する不安から、連帯保証人を外せる条件を金融機関に交渉。結果、”500万円を繰り上げ返済すれば外します。”との回答であったため、夫の実家の資金援助で返済を行い、夫単独の債務としてもらった。
「金融機関側は、万が一(滞納)のことがあっても、家を差押えて全額回収できるのが確実であれば、柔軟に応じます。」との話だった。
ケース2 借り換え・住み替えで外れた
★梨央さん 30代 神奈川県
『夫単独で連帯保証人不要のローンに借り換えることができました。』
都市銀行借入。夫婦共有の連帯債務であったが、離婚することに。住宅ローンは、そこに住み続ける夫が責任を持つことになったので、夫単独名義でネット銀行に借り換えをした。
借り換え先は、団体信用生命保険に加入できれば、連帯保証人を求めない金融機関だったので、すんなり話がまとまった。元夫にある程度の年収があるので、それが良かったのかもしれません。
★紀代実さん 40代 東京都
『元夫が再婚する際、新しい家を買い、次のローンで私は無関係になりました。』
立川市のマンションを住宅金融支援機構で借り入れて購入していた。離婚後も連帯債務者の件は解消しないままだった。離婚して3年後、元夫から『再婚するので、マンションを一戸建てに買い替える。今の家のローンの売却手続きに同意が欲しい。』と連絡があった。
元夫は、マンションの売却損を次の物件に上乗せして借り直す、”住み替えローン”を利用する、とのことだったので、無条件で協力しました。結果、家の名義にもローンにも関係がなくなった。
ケース3 自分自身や親族で買い取った
★実幸さん 30代 大阪府
『マンションは、私が残債額でローンを組んで買取りました。』
離婚後も元夫名義の家に私と子どもが住んでいます。以前は元夫名義の家とローンで、私が連帯保証人でした。
元夫には借金癖があるので、いつ自己破産などで家から追い出されるか分かりません。子どもの転校や離婚後までトラブルに巻き込まれるは避けたかったので、夫名義のローンを私で借り直し、所有権も移転させました。周囲は連帯保証人を外れることはできない、という声が多いのですが、私の場合はスムーズでした。その理由は、私が公務員であることと、元夫より年収が高いためではないかと思います。
★早苗さん 50代 千葉県
『夫が事業に失敗。自宅は私の父が買い取って、私の連帯保証分は消えました。』
自宅は地方銀行、事業資金は日本政策金融公庫と信用金庫からの借入。三代目社長である夫が会社経営に失敗。自宅は夫名義で、私が住宅ローン分の連帯保証人でした。夫は会社の清算とともに自己破産することになりました。
家は守りたかったし、夫が破産をすれば保証した借金は私の責任になるので、実家を頼りました。相続でもらう財産の先渡しとして、実父が家を借金額で買い取ってくれました。父には公正証書遺言を作ってもらい、この家は私が相続することになっています。
離婚するなら、家の懸念も解消しておきましょう
家のローンに関する相談のほとんどに離婚が絡んでいます。
離婚すれば法律上は他人ですが、家の契約は離婚の影響を受けません。そのため、離婚する際に家のローンや維持費、権利関係についての心配ごとは、別れる前に解消しておきましょう。
住宅ローンはその物件に住む人が使えるローンです。妻側が住むのであれば、妻名義の所有権とローンにしておきましょう。名義人である夫が出て行って、妻らが住み、ローンは養育費代わりに夫が支払う、という方法は契約違反でもあり、長期でその約束が果たされるのかといった心配もあります。また、住宅ローン以外にも固定資産税や修繕費、損害保険料などが発生します。それは誰が負担するのかについても折り合っておかなければなりません。
権利とは社会的なもの
住む権利がある、私のものだ、と主張するには、その財産を得るのに相応の経済的な負担をしたり、権利があることを裏づけできる根拠が必要です。金融機関からの融資を受けて担保設定されている住宅ローンの場合、完済しない限りは家庭内の話し合いだけ解決はできません。
貸し手の目線になって考えてはじめて、相手とこちらの合意点を折り合わせることが”交渉”となるのです。
まとめ:婚姻関係と一緒にそれまでの生活環境も清算したほうがよい
”住みたい、自分の名義にしたい!”という希望だけでは話はまとまりません。同じく「連帯保証人を外してほしい。」「ローンは住んでいないにしろ、ちゃんと払うのだから、誰が住もうが関係ないでしょ。」といった言い分も一方的な理屈であり、交渉ではありません。
離婚の際も、「慰謝料・養育費・住宅ローン負担に財産分与」と主張しうる限りの要求をすること自体は、権利がありますので、非難されるものではありません。社会的にも女性側の収入が低いうえ、子どもを引き取るケースが多いのですから、お金はその後の生活の保全には必要不可欠なものです。
ただ、人は時間の経過とともに状況も心境も変化します。離婚時の約束を楯にしても、それが確実なものかどうかは、相手次第であることは、リスクとしてある程度見込んでおく必要があります。
妻側が『離婚時に私はローンが組めなかったので、家の名義だけ私に変えて、離婚公正証書まで作って、養育費代わりに住宅ローンを元夫が払う、と定めていたのに、元夫が自己破産したのです!』と、相談に来られる方がいます。
多くの相談を受けていて感じるのは、”離婚の際には、婚姻関係と一緒に生活環境も清算しておいたほうが思わぬトラブルを避けられる”ということです。賃貸ならおたがいに転居、持家なら売却、です。ヒトは失敗を認めたり、損することを極度に恐れますが、いろいろな可能性やリスクを総合的に見込んだ場合、当初の段階で一番したくない決断をするほうが、少なくとも経済的には合理性が高い場合が多く、その後の立て直しもしやすいでしょう。