任意売却の費用・手数料は?初期費用が無料の理由と仕組みを解説
結論から言うと、任意売却の費用(手数料)は原則「持ち出し不要」です。売却後の代金から必要経費を精算するため、着手時に現金を準備する必要はありません。
この記事では、なぜ任意売却に初期費用がかからないのか、実際にどんな費用が発生するのかを具体例で解説します。
なお、任意売却の全体像を知りたい方は、「任意売却とは?仕組みをわかりやすく解説」をご覧ください。

- この記事の監修者
- 富永 順三 任意売却119番・代表コンサルタント
- 宅地建物取引士
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任意売却の手数料について
任意売却をスムーズに終わらせるには、専門知識がある不動産会社の協力がどうしても必要になってきます。そこで、頼むときに高い手数料がかかるんじゃないか、と心配される方もいます。実際のところ、任意売却を進める上で必要になる費用は、主に仲介手数料、抵当権抹消のための費用、それから滞納している税金などに分かれます。
任意売却の手数料は仲介手数料のみ
任意売却の手続きを進める中で、あなたが支払う費用は、売買が成立したときに不動産会社へ支払う「仲介手数料」のみです。それ以外の費用を別途請求されることはありません。
では、この仲介手数料がいくらなのか?これは宅地建物取引業法(通称、宅建業法)によって上限が決められています。具体的には、売却価格によって手数料が変わってきます。
仲介手数料の計算式
| 売買価格(税抜) | 料率 |
| 200万円以下の部分 | 5% |
| 200万円超〜400万円以下の部分 | 4% |
| 400万円超の部分 | 3% |
この金額に消費税を加えたものが、任意売却にかかる仲介手数料の上限額となります。
ですが、上記のように売買価格を3つの価格帯に分けて、異なる料率をかけて合計する「段階式」だと手間がかかるため、実際は売買価格全体に一律3%をかけて、後から不足分を足す「速算式」が用いられます。
たとえば、売却価格が1,000万円の場合、上限額は以下の計算式で求められます。
仲介手数料の上限 = 1,000万円 × 3% + 6万円=36万円(税抜)
なお、計算式の中にある「+6万円」は、仲介手数料の計算を簡単にするための「調整額」です。売買価格の400万円以下の部分を、本来の料率(5%と4%)で計算するのと、速算式で一律3%で計算するのとで生じる不足分(差額)を補うための数字なのです。
もう少しわかりやすく、具体的に説明します。
200万円以下の部分
- 本来: 200万円 × 5% = 10万円
- 3%で計算: 200万円 × 3% = 6万円
- 差額: 10万円 – 6万円 = 4万円
200万円超〜400万円以下の部分(200万円分)
- 本来: 200万円 × 4% = 8万円
- 3%で計算: 200万円 × 3% = 6万円
- 差額: 8万円 – 6万円 = 2万円
合計差額: 4万円 + 2万円 = 6万円
つまり、仲介手数料の計算式に含まれる「+6万円」とは、400万円を超える物件であれば必ず加えるべき調整額として、速算式に組み込まれているのです。
任意売却の手数料は原則、持ち出し不要
通常の不動産売却では、仲介手数料やリフォーム代、引っ越し費用などで売却代金の5%から10%程度を事前に用意することがありますが、任意売却の場合は、そうした費用を売却代金が確定してからその中から精算する仕組みになっています。
そのため、手続きのために事前にまとまった現金を準備しなくても大丈夫です。
手数料以外に費用がかかるケース
たとえば、印鑑証明書や住民票といった公的な書類を取得するための費用や、売買契約書に貼る収入印紙代などがかかります。収入印紙代は契約金額によって変わりますが、数千円程度を見ておくと良いでしょう。
また、特に注意が必要なのが、税金を滞納している場合です。もし、固定資産税などの税金を滞納していて、すでに自治体からご自宅に「仮差押え」が設定されていると、その差押えを解除するための費用を支払わなければなりません。
自治体によっては、差押えを解除するために税金の一部納付に応じてもらえないケースもあり、その対応は非常に厳しくなります。この税金の差押えは、任意売却を進める上で最大の障害になりかねませんので、できるだけ早めに対策を検討する必要があります。
▶ 関連記事:税金滞納で差押えや競売に?
任意売却で発生する主な費用
| 費用項目 | 概算額 | 備考 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格の3%+6万円(上限・税別) | 成約時に売却代金から控除 |
| 司法書士費用 | 1〜3万円前後 | 権利関係手続・抹消など |
| 管理費・修繕積立金の滞納 | 数万〜10万円程度(上限あり) | マンション等の場合 |
| 固定資産税などの滞納分 | 状況により異なる | 仮差押えがある場合に限る |
| 引越し費用 | 〜20万円程度 | 債権者同意があれば売却代金から拠出可 |
任意売却を進める上で、上記のような経費や清算すべき費用が発生します。ただ、経済的に大変な状況にある売主ご自身で、これらの費用を用意するのは難しいケースがほとんどです。
そのため、任意売却では、債権者(金融機関など)の同意を得ることで、売却代金の一部をこれらの経費や清算金に充てることが認められています。
仲介手数料以外に、どのような費用も売却代金から支払えるかを解説します。
司法書士費用
住宅ローンを借りる際に設定された抵当権は、家を売却する際に必ず抹消しなければなりません。この抹消登記手続きを行うために司法書士へ報酬を支払います。また、この登記手続きそのものには登録免許税という税金がかかります。
登録免許税は法務局に納める費用で、不動産一つにつき1,000円が必要です。建物と土地を一つずつ所有している場合は、合計2,000円となります。
さらに、司法書士の報酬として、登記手続きを専門家へ依頼する費用が発生します。この費用の目安は1~3万円程度ですが、これには事前の調査費用や、必要な証明書の取得費用、関係書類の郵送料なども含まれています。これらの費用もすべて、売却代金の中から精算できます。抵当権の抹消などの登記手続きには専門的な知識と正確さが求められるため、司法書士に依頼するのが一般的です。
印紙税
買主との売買契約書に貼り付ける収入印紙の費用です。
不動産の売買契約書には、現在、令和9年3月31日までに作成されたものに対して軽減税率が適用されています(契約金額が10万円を超えるもの)。
売買契約書に貼る印紙税の具体的な金額は、つぎのようになります。
| 契約金額 | 本則税額 | 軽減税率 |
| 100万円超え 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円超え 1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円超え 5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超え 1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超え 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
| 5億円超え 10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
| 10億円超え 50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
| 50億円超え | 60万円 | 48万円 |
固定資産税などの滞納分
住宅ローンを滞納している方は、固定資産税なども滞納されているケースが多いです。これらの税金の清算も売却代金から可能になる場合があります。 ただし、滞納額が高額な場合は、全額の持ち出しについて債権者の同意が得られないこともあります。
マンションの管理費・修繕積立費の滞納分
マンションの場合、滞納している管理費や修繕積立費についても、売却代金から清算できることがほとんどです。
なぜなら、これらの費用が清算されていないと、買主がその滞納分を引き継ぐことになってしまい、買い手がつかなくなってしまうからです。買い手がつかないことは金融機関(債権者)にとっても望ましくないので、同意を得られやすい項目です。 ただし、こちらも滞納額や売却価格に占める割合が多い場合は、同意が得られない可能性もあります。
▶ 関連記事:任意売却では滞納したマンションの管理費はどうなるの?
引越し費用について
債権者の同意が得られれば、引越し費用(多くても20万円程度)を売却代金から拠出できる場合があります。競売では自費ですが、任意売却なら交渉余地があります。
詳しくは引越し費用を確保するコツ をご覧ください。
任意売却で高額な税金は原則かからない
通常の不動産売却とは異なり、任意売却では高額な税金が発生するケースはほとんどありません。これは、任意売却が行われる状況が、売却価格よりも住宅ローンの残債が多い「オーバーローン」であることが一般的だからです。
譲渡所得税が発生しない理由
不動産を売って利益が出たときに払うのが、譲渡所得税という税金です。これは所得税と住民税として納める必要があります。
この譲渡所得は、売却価格からその不動産を買うときにかかった取得費と売るためにかかった譲渡費用を引いて計算します。
任意売却の場合、ほとんどが売却価格がローン残債に届きませんから、そもそも利益、つまり譲渡所得が発生しません。ですから、この税金がかかることはありませんのでご安心ください。
ごくまれなケースですが、売却価格がローン残債を大きく超えて、取得費や譲渡費用を引いても少しだけ利益が出るような例外的なときだけ、課税対象になることがあるのです。でも、これは本当に珍しいケースです。
費用面でも任意売却は競売より有利
任意売却は公的な手続きである「競売」と比較して、売主にとって圧倒的に有利な条件で自宅を売却できる可能性が高いです。
その理由は、単に市場価格に近い価格で売れるというだけでなく、売却に伴う諸費用や、売却後の残債の取り扱いにおいても、任意売却の方が柔軟に対応できるからです。具体的な比較を通じて、任意売却のメリットを確認していきましょう。
売却価格を比較
競売は裁判所主導の公的な売却手続きであり、債務者の意思が反映されません。一方で任意売却は、一般の不動産市場と同じ方法で、金融機関の合意のもとで売却活動を行います。
| 任意売却 | 競売 | |
| 売却価格 | 市場価格の80%~100%程度 | 市場価格の50%~70%程度 |
| 価格決定者 | 債権者・市場の需給 | 裁判所の評価人 |
| 購入希望者 | 一般の個人・業者 | 主に専門の不動産業者 |
たとえば、市場価格が3,000万円の物件で比較した場合、競売では市場価格の70%程度の2,100万円で落札されることも珍しくありません。
- 任意売却: 2,700万円で売却(市場価格の90%)
- 競売: 2,100万円で売却(市場価格の70%)
この差額600万円は、そのまま住宅ローン残債の返済に充てられるか、残債として手元に残るかの大きな違いを生みます。
売却にかかる費用を比較
競売の場合、つぎの費用がかかります。
| 申立手数料 | 数千円~数万円 |
| 予納金 (主に鑑定費用) |
数十万円~100万円程度 |
| 登録免許税 | 数十万円程度 |
| 郵便切手代 | 数万円程度 |
| 引越し費用 | 自己負担 |
これらの「申立手数料」「予納金」「登録免許税」「郵便切手代」といった費用は、すべて裁判所に納める公的な費用です。これらは、いったん債権者が立て替えますが、最終的には売却代金から回収されるか、回収しきれない場合はあなたの残債に上乗せされます。
売却後の残債を比較
売却後の残債においても、任意売却と競売はつぎのような差があります。
たとえば、住宅ローン残高3,500万円、競売で発生する裁判所費用(合計) 100万円の場合で比較してみましょう。
- 任意売却による売却代金: 2,700万円
- 任意売却後の残債: 3,500万円 – 2,700万円 = 800万円
- 競売による売却代金: 2,100万円
- 競売後の残債: (3,500万円 + 100万円) – 2,100万円 = 1,500万円
実際には、任意売却の際には前述の諸費用がかかりますので、残債はもう少し多くなりますが、仮に諸費用が+4%かかったとしても800万+108万円=908万円ですので、競売の方が約600万円も残債が多くなります。
また、残債の返済についても、任意売却なら無理のない返済計画(例:毎月1万円など)を債権者と直接交渉できます。
一方、競売後の残債については、交渉の余地が少なく、債権者の要求通りの返済額を求められる可能性が高くなります。
▶ 関連記事:任意売却と競売の違いは?メリット・デメリットを図解で徹底比較
まとめ

ここまで解説したように、任意売却の際、依頼者の方が仲介手数料以外に、費用を別途負担することは基本的にありません。
滞納している固定資産税などの税金、あるいは不動産の売却にかかるさまざまな経費も、売却代金の中から優先的に支払われるケースがほとんどです。ですから、ご相談いただく時点ですぐに現金をかき集める必要はありません。
私たち「任意売却119番」は、約100件のメディアに専門家として出演するプロフェッショナルです。金融機関との交渉から売却の手続き、売却後の生活再建までサポートしますので、お気軽にご相談ください。
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