税金滞納:差押えで任意売却ができないことも…
任意売却の伏兵:税金滞納による差押え
住宅ローンは滞納していないから大丈夫…とは限りません
長い住宅ローン返済の途中で、不測の事態に陥ることがあります。減収や転居、離婚、事故や病気などがきっかけで任意売却に至る方が多いことからもわかります。しかし、先行きが怪しくなった時点で早めに対応しておけば、任意売却や競売にかかわることなく自宅を維持できるケースもあるのです。
税金の滞納による“差し押さえ”とは
1.家以外も差押えを受ける
不動産のみならず口座、自動車や貴金属、骨とう品も差し押さえ対象です。真っ先に差押えを受けるのは、たいてい預金口座です。税金の回収も容易です。次に差押えをうけやすいものは、給与。ただし全額ではなく、法律で可処分所得(手取り収入のこと)の4分の1が上限です。
しかしながら、口座が見つからない場合や残高がマイナスの場合は、口座を凍結しても何ら回収が望めません。その場合は、自動車や不動産といった、動産が次なる差し押さえ対象です。
2.不動産の差し押さえ
税金滞納で差し押さえを受ける際は、物件に「差押登記」をします。これで所有者が自由に不動産を売却することができなくなります。
たとえば、差し押さえの解除がなされなければ任意売却をすることができません。住宅ローンがない、あるいは少ない場合は公売に掛けられる可能性がありますが、不動産への担保融資が多い(特にオーバーローン)場合は、公売にかけても回収が見込めないため、大きな動きとはなりません。
ただし、優先税(対象不動産の購入日よりまえに納付期日を迎えた税金)がある場合は、抵当権に優先します。
税金の滞納から差押えまでの流れ
税金の滞納が始まってから、差し押さえを受けるまでの流れを見てみましょう。
①税金の納付が遅れる
納付期限までに税金を納めなければ、滞納となります。納付期限は税金の種類や自治体によって異なりますので、納税通知書は必ず目を通しましょう。納付期限を過ぎると原則、延滞税が加算されます。
②督促を受ける(書面)
法律では『納付期限後20日以内に督促状を発し』とあり、その決まりに則って郵送で督促状が届きます。
③催告書が届く
督促状を受けても未納を続けていると、催告書が送られてきます。これは、納付や延納交渉などに応じない場合、資産の差押えや強制執行などの予告です。
④財産調査
住民税や固定資産税、自動車税など地方税については、督促状を発した日から10日以内に税金を納付しない場合に滞納者の財産を差し押さえることができると定められています。幾度にもわたる督促への対応がない場合、口座をはじめ、納税義務者の財産調査が行われます。
⑤差押予告書
財産調査を経ると、国税庁を含む役所から滞納者へ差押予告書が送られます。最終通告の位置づけであり、基本的には税金の納付を促すものですが、期限までに納付しなければ預金や給与などの財産を差し押さえるという予告が明記されています。
⑥差し押さえ
差し押さえを受けるのは、金融機関の口座や不動産が多いと言えます。口座の場合は原則、残金を納付に充てられて終了です。不動産の場合は差押え登記がなされ、担保融資をしている金融機関へ連絡がいきます。
⑦公売予告→公売(入札制)
差し押さえられた動産類や不動産は、公売を経て換金されます。一般に公売も競売もオークション形式であり、ヤフーオークションなどで広く入札を募ります。
なお、公売前に予告通知が届きます。※公売予告通知が届いた段階であったても、不動産は任意売却をすることができます。
まとめ
放置しないようにしましょう
住宅ローンは払っても、税金を後回しにする人が後を絶ちません。納税義務者と呼ぶからには、役所や国税庁は納付を強く求めますし、毅然と対処していきます。特に事業者は税金の支払いで行き詰まる、あるいは急速に資金繰りが悪化するケースが多いのです。また、高利率の延滞税の加算も見過ごすことはできません。
状況悪化を防ぐためには、滞納しそうになった時点で管轄役所に分納交渉しましょう。