任意売却でよくあるトラブルとは?注意すべきポイントを解説
金銭的な問題は、かなりのストレスや不安をもたらします。任意売却をする方の多くが心身ともに疲れ果て、ご相談に至っています。
インターネットでいろいろな情報を探るうち、疑心暗鬼に陥る方も少なくありません。トラブルが追い打ちになっては、目も当てられません。親身に相談に乗ってくれ、信用のおける先に相談したい。当然のご希望でしょう。
では、任意売却におけるトラブルには、どのようなものがあるのでしょうか。
これから任意売却をする方のために、トラブルにはどのような例があり、それを避けるためにはどのような視点や知識が必要なのか。
任意売却でよくあるトラブル
任意売却とは、経済的な困難さから住宅ローンが返せなくなり、競売を避けて不動産を売却するものです。
売却しても住宅ローンの残高のほうが多いため、売却する前にローンの貸し手である金融機関(債権者)の許可を得る必要があります。
つまり、金融機関にとっては『競売で処分すべき不動産を、完済できなくても売却を認める』特別な対応なのです。
このことから構図としては、『債権者の(利益にかなう)ための任意売却』です。
任意売却で起こりうるトラブルというのは、この仕組みや前提を充分に理解せず、任意売却に対する期待値が高い相談者と、仲介業務に入る不動産業者の経験や知識不足から生じる場合が多いようです。
まず、任意売却は『債権者が主導権を握る』こと、そして『債権者が許可しなければ』成立しません。
多くの任意売却のサイトでは、分かりやすさとメリットを感じてもらうために“債務者にとっていかに有利か”を中心に任意売却を説明しています。
しかし、債権者にとって有利な債権回収でなければ、そもそも取り上げてはもらえません。
つまり、債務者のメリットが債権者のメリットにつながっているか、を考える必要があるのです。
債権者が競売申立を待ってまで任意売却に応じるのは、それが有益なためです。
決して温情で任意売却を認めているわけではないため、住宅ローンの滞納を経た以上、債権者側の配慮、引越し代の拠出、残債務について優しい対応が期待できるわけではないことを理解しておきましょう。
引越代をめぐるトラブル
「引越代100万円お渡しします」など、甘い文句で媒介契約や売買契約を迫り、実際には約束を果たさないなど、一部悪質な業者が存在するのは確かなようです。
任意売却がそれほど多くなかった時代には、高額の引越代が用意できたこともありますが、現在では一般的な居宅の売却で多額の現金を受け取れることはまずありません。
さまざまな手口が報告されていますが、ここでその全容を記せば悪徳業者に知恵をつけ、ますますトラブルの種を蒔くことになるのでできません。
「引越代」は、買主様が好意で用意してくださるものだと理解してください。
残債をめぐるトラブル
“うますぎる話”にはご注意ください。
お借り入れの返済について、契約欲しさに不正確な返答をする不動産業者が、残念ながら一部にいるようです。
【誤】「任意売却後は、残債務の請求がなくなります。(払う必要がありません)」
【誤】「滞納しても、連帯保証人にまで追求が及ぶことはありません。」
任意売却を行った後の残債務(住宅ローンの残高 - 売却価格 = 残債務)は免責されるわけではありません。
この先も、少しずつ返済を続けなければなりません。
不動産の買い手がつかないトラブル
不動産売買は、売る側と買う側が存在してはじめて取引が成立します。
そして、取引が成立するかどうかには、その不動産の“人気度”が大きく関わってきます。
不動産の人気度を決める要素は、立地と物件内容、周囲の環境などです。
任意売却も同様で、「引き合いの多い物件」と「反響の薄い物件」があります。
さらに任意売却は、“現況有姿取引”といって、リフォームなどを施さずに買主に引き渡します。
使用感のある中古物件をそのまま引き渡される以上、高い値段で買おうとする人は稀です。
この点を売主である債務者側は、よく理解しておく必要があります。
債権者もいつまでも競売申立てを待ってはいないものの、任意売却は競売より明らかにいい取引である必要があるため、当初は高い値段で売り出しをはじるよう指示することが増えてきました。
そのため、任意売却を始めた当初は、反響がまったくない、あるいは薄いこともよく生じています。
しかし、任意売却は時間との闘いでもありながら、債権者の指示通りに動かなければなりません。
それゆえ、『競売になってしまうかもしれない…。』という想定はしつつ、任意売却に取り組まなくてはなりません。
では、任意売却をしたくても、競売で終わってしまう可能性はどのくらいでしょうか。
それは、物件次第であるため、一律に何パーセント、と表すことはできません。
ご自身の物件が客観的に、どんな魅力やどれくらいの価値があるのか、が重要です。
価格面はもちろん重要ですが、そもそも売買が困難な物件もあります。
例えば、物件が市街化調整区域にある、建物の状態が悪い、周辺環境がよくない、再建築不可である。
物件要素以外には、多額の税金滞納で差押えがある、分譲マンションならば、修繕積立金などの維持費が高い、といった要素です。
これらの場合は、通常売却と同様に任意売却も難航しがちです。
トラブル防止のために知っておくべき任意売却の知識とは?
任意売却という手法が世間に広まれば広まるほど、トラブルもよく聞くようになりました。
不動産会社の「任意売却の経験があります」「多数の実績があります」という話の裏付けを取ることができない以上、言い分を信じるほかないのも原因のひとつでしょう。
債権者である金融機関も、その現状はよく把握しているようです。
任意売却119番の相談者のなかには、他業者で任意売却を依頼していたものの、債権者から債務者に業者変更を促された、というケースまであるのです。
任意売却は制約が多いなかで進める売買であるため、相談者は、頼りになるはずの不動産業者なのに、言葉ほどの実績や知識がなかったり、あとで話が違う、といったトラブルは避けたいことでしょう。
よい仲介業者を決めるためにも、任意売却について、以下の点をしっかりと理解したうえで、相談先業者の説明を吟味しましょう。
<任意売却の鉄則>
・債権者が主導権を握っている
・任意売却後の残債務が自然に消えることはない(自己破産を除く)
・引っ越し代が出るとは限らない
・“競売にはならない”という約束はできない
つまり、相談者にとって都合のいい話は疑ってかかるほうが身のためなのです。
希望をいだくより、納得感のある話に耳を傾けましょう。
引越し代金が必ずもらえるわけではない
ほとんどのケースで20万円~50万円程度の引越代を捻出できていますが、「債権者(借入先)が引越代を必ず渡さなければならない」と法律で決まっているわけではありません(これは任意売却でも競売でも同じです)。
ですから、「○○円もらえないなら、出て行きません」などと言って強硬に交渉することはできません。
また、常識の範囲を超える金額を引越代として受け取ることもできませんので注意してください。
残債が0になるわけではない
住宅ローンの返済が難しくなって売却に至ったという経緯は、債権者(お借入先)にも理解してもらえます。
ですから、月々1万円とか2万円ずつといった、生活状況に応じて無理のない範囲で返済を続けることは、話し合えばほとんどのケースで認めてもらえます。
しかし、だからと言って、返済をしなくていいというわけではありません。
今後の生活への不安を少しでも和らげていただく意味で、任意売却相談員が「返済を無理なさらなくていいですよ」と言うことはありますが、安易に「返す必要はありません」と言い切ることは悪質な相談員でない限りありません。
競売になる可能性もある
任意売却は、住宅ローンの滞納を経て行うことができることから、常に競売のリスクと隣り合わせです。
住宅ローンの滞納が生じると、債権者は抵当権の実行である競売をするのが原則的な対応だからです。
つまり、任意売却を希望すれば、債権者に応じてもらえるとは限らず、またその義務もありません。
そのため、任意売却をしたくても最初からできない、あるいは任意売却を取り組んだが競売で終わってしまった、というケースも残念ながらあります。
特に以下の場合は、任意売却がそもそもできない、あるいは厳しいケースであるため、競売となることを覚悟したほうがいいことも多くあります(特に任意売却が困難なのは、1と2です)。
- 所有者、連帯保証人の協力が得られない、あるいは意思能力を失っている
- 債権者が抵当権の抹消について、完済が条件である(実質、任意売却に応じない)
- 税金や管理費の滞納などで、多額あるいは複数の差押えがある
- 流通性のよくない地域にある、一般的な居宅以外の物件
- 任意売却期間が短い
注意すべき悪徳業者の特徴
法律違反を犯すような業者を悪徳業者と断じるのは簡単ですが、問題はグレーな対応をする業者です。
特に“断りづらい”業者こそ機知に富んでいますので、悪徳かどうかを見極めるのは困難でしょう。
ここでは、悪徳と断定はしないものの、関わらないほうがいい業者の特徴について説明していきます。
お金をくれようとする
悪質業者の中には、「媒介契約をするだけで、お金を渡す」と言って、契約を締結する会社があります。
本来、任意売却専門業者は、報酬として受け取る側であって、支払う側ではありません。
そのため、依頼者であるあなたにお金を支払うのは道理から外れているのです。
しかし、こういった話を持ちかけられて、お金を受け取ってしまう人がいます。
このような不可解なお金を受け取ると、後々トラブルの元凶になりかねないのにです。
では、なぜこういったお金を渡すのでしょうか?
理由は、債務者に安心感を与え、後々売却した代金から法外のお金を騙し取るためです。
事前にお金を渡しておいて、後々何か不手際があった際に、債務者に契約解除をさせない狙いもあります。
どんな名目であれ、専門業者からお金を受け取ってはいけません。
受け取ったことにより、あなたが不利な状況に追い込まれる可能性があります。
任意売却申請費やコンサルティング料を要求する
任意売却においても、仲介業者が受け取れる報酬、いわゆる仲介手数料は宅地建物取引業法により、その上限が決められています。
物件価格が400万円以上の場合、「成約価格の3%+6万円+消費税」が上限額となっています。
任意売却119番では、その手数料も債権者と交渉して拠出に応じていただけるようにしており、相談者から持ち出し費用が発生しないようにしています(売買契約書に貼付する印紙代や印鑑証明書などの費用は発生する)。
そのため、仲介の不動産業者から“交通費や広告費”、“コンサルティング料”、“申請費、交渉費用”などと言って、仲介手数料以外の費用を求められたりした場合は、国土交通省などが以下の相談先を紹介していますので、直接かつ早めにご相談ください。
参考URL:宅地建物取引業免許(知事免許)に関する窓口一覧(国土交通省)
任意売却の成功を保証する
任意売却における仲介業務は、各関係者との交渉を重ねつつ、競売を避けるべく売却へ道筋をつけていく並列処理業務です。
時間の制約があるため、1の次に2の段階に入るのではなく、話が決裂する可能性も念頭に置きつつ、着地を見据えて段取りを併行して進めていくものです。
にもかかわらず、一定数の任意売却業者が「競売はさせません。引越し費用も保証します。」「債権者の返事待ちなので、それまで何もできません。」などと言っているようです。
任意売却をよく知らない人にとっては、期待感や納得感のある言葉ではあるでしょう。
しかし、将来や相手の動向にまで断言ができるはずはなく、制約のある期間内に任意売却をまとめるには、前倒しで動く必要があります。
要領が分かっていない任意売却業者に依頼してしまい、その後連絡がない、競売にかかったら降りると言われた、保証すると言われた引越し代がもらえなかった、という相談を受けることが少なくありません。
もちろん案件のなかには、「まず間違いなく任意売却で解決できるだろう」というものもありますが、その場合でも売買には相手がある以上、“絶対”はないのです。
実績のある任意売却専門業者に相談しよう
任意売却において、生じやすいトラブルについて述べてきました。
任意売却は、ある段階から後戻りすることは困難です。
また、一生に一度経験するか否か、という任意売却です。
よい不動産業者に出会うことができれば、的確な対応と案内を得ることができるはずです。
任意売却で後悔をしないための最大ポイントは、『甘言にのらない』ことです。
生活苦につけ込んで、初期相談時に僅かなお金を渡し、媒介契約に署名・押印をさせる。
「任せてもらえば、引越し費用を用意し、競売にはさせない。」といった断言をする…。
こういった業者の多くは、媒介締結も強引である傾向にあるようです。
考える時間を与えようとしない、迫るような対応に出遭った場合は、家族と相談してから返事をする、などと返答し、一旦断るほうが賢明です。
契約は、後日でもできるのですから。
誠実な任意売却業者は、「甘い見込みばかりを強調しない、相談者の状況や将来の生活に関心や心配を示す、断言が少ない。」という特徴があります。
悪徳業者を避けるためにも、言うことが全て“良いことづくし”の業者には注意が必要です。