税金滞納による差押えと任意売却
◆本当は怖い税金滞納
住宅ローンだけは払っているから大丈夫…とは限りません
住宅ローンはきちんと支払っているのに、自宅が差押えられることがあります。その原因の多くは、税金滞納によるものです。そして、任意売却ができないまま、競売で終わってしまう理由の大きな要因でもあります。国や地方自治体は国民の味方であろうと、租税の納付を後回しにしていると、そのツケはどんどん大きくなって未来にのしかかってきます。
「まさか役所が家を取り上げるなんて!」
税金は、払える時に払えばいい。そう思っていませんか?
『住宅ローンを滞納すると、競売になる。だからローンが優先だ。』などと、固定資産税をはじめとする税金の納付を後回しにして滞納額を積み上げてしまって泣きをみる方は少なくありません。
実際に住宅ローンの滞納がなくても、役所から公売の申し立てを受け、任意売却に踏み切らざるを得ないケースは一定割合で発生しています。なかには、「あともう少しで住宅ローンを完済できるのに、自宅が公売になった!」と、慌てて相談に来る方もいます。
そんな事態を避けるために、税金滞納のリスクを理解しておきましょう。
◆税金滞納と任意売却 ~優先すべきはローンより税金納付~
任意売却をする方は住宅を守りたい一心で、住宅ローンの支払いを優先する傾向にあります。カードローンや消費者金融の借入で住宅ローンを支払ったことで多重債務に陥ったり、固定資産税まで滞納している方が少なくありません。実は、生活費の次に優先度が高いのは、租税の支払いなのです。
昨今は国税もそうですが、地方自治体の税収が落ちています。国や市区町村は、様々な手段を講じて徴収を図っています。租税の滞納には厳しい措置を取り、差押えも次々にします。
差押え対象は、持家はもちろん給与や保険の返戻金なども入ります。極端なケースでは、優先税(後に説明)での差押えがあります。経緯としては、住宅ローンを組む際に年収が足りないからなどと、住宅の販売業者に勧められ、安易に収入を修正申告したことが理由です。住宅取得後に追徴課税を受けたものがそのまま滞納となり、差押えを受けている。こういったケースが多々あります。住宅取得(抵当権設定)以前に発生した税金=優先税は、任意売却などで売却する際でも、抵当権に先んじて配分されることになります。抵当権と税金の優先関係は、抵当権設定登記の日と、税金の納付期限の後先により決定します。
◆税の仮差押えを受けていても任意売却を成功させる秘訣
住宅ローンの債権者が任意売却に応じる先であることが前提であることはもちろんですが、解決に導くポイントがあります。
1)滞納税額が多くない(目安30万円以下)
2)一部納付でも差押え解除に応じる自治体である
3)いくつもの種類の税金を滞納していない
任意売却では関係者が少なく、差押えもないことが望ましいのです。
税金にはさまざまな種類があり、国税として所得税や法人税、消費税など。地方税には住民税、固定資産税や都市計画税がそれにあたりますが、これらの税金滞納分への支払いについては、任意売却の売却代金から充当されることがあっても、わずかにすぎません。
地方税の対応は、自治体によって姿勢はさまざまであり、実は全額納付をしないと、差押え解除には応じない、強硬な対応をする自治体が少なくありません。優先税でない限り、競売では1円の配当も受けられないにも関わらず、一部の配分(納付)では一切応じない、としている自治体に於いては、不足分を所有者が用意しないことには、競売で決着せざるを得なくなってしまいます。しかし、税金の分納すら難しい人が、不足分をすべて用意するのは困難でしょう。
◆任意売却で税金滞納が消化できることも
住宅ローンを貸し出している民間金融機関の多くは、住宅金融支援機構にならい、任意売却代金からマンションの管理費などの滞納分などを配分してよいとしています。その範囲は金融機関によって異なりますが、多くは10万円あるいは、滞納している本税(延滞税は含まず)の1割のいずれか低い額、としています。残った税は分納交渉をします。任意売却をきっかけに税金滞納を解消していきましょう。
◆高額の税金滞納では、競売となるケースも
しかし、差押えを受けている方の滞納額は延滞税も含め、数十万円を超えていることがめずらしくありません。事業を営んでいる方だと、ときに数百万円の租税滞納ということもあります。延滞税は高率です。数年放置すると、元本を優に上回る滞納額に膨れ上がることもあります。金額があまりに多いと役所の差押え解除は困難を極め、最終的には任意売却を図ることができず、競売で終わる確率が高くなってしまいます。
◆任意売却できるとは限らない
私たちが任意売却をお取り計らいする際は、すべての差し押さえ解除のために動きます。たとえば、所得税と固定資産税でそれぞれ仮差押えがあり、住宅ローンもあると、交渉先は3つとなります。事前に債権者、国税局、役所へ差押え解除についての交渉を重ねておき、任意売却への協力を取り付けるのです。
なお、カードローンなどの滞納で競売(公売)開始決定となると、競売は不動産の登記簿謄本に登記され、住宅ローンの債権者へ通知がいきます。
すると、それまで滞納のなかった住宅ローンについても契約破棄となる可能性があります。金銭消費貸借契約(金消契約)に、「物件が差押えを受けた際は、一括弁済請求をする」という意味合いの文言があります。
◆租税の差押えなどでお困りの方々へ
『交渉は決裂せず、穏やかに対応しましょう。』
私どもが役所へ差押え解除の交渉に行きますと、よく「この所有者は、ここへ何度もクレームをつけている。」「窓口で長々と大声で職員を恫喝する。」などと、役所担当者から、債務者への心証の悪さを聞くことがあります。役所で働く方々も人間であり、納税は職務として求めています。他に仕事もあります。納税の義務を果たせていない方が役所で感情的に大声をあげたり、担当者を罵っていれば、相手も態度が硬化させるのは当然です。
税金を支払えないことは不本意でしょうが、差し押さえる側も望んで強硬な手段を講じているわけではないはずです。相手の動きをどうするかは、債務者である方がカギを握っています。
ときに、納税義務者のあまりの悪態ぶりに辟易し、無剰余(※)を承知で競売や公売手続きを取っている、と打ち明ける担当者もいます。
分納相談のために役所へ赴く際には、”交渉カードは、取り立てる側にある”ことを念頭において、交渉に臨んでください。私どもも必要に応じ、各役所や関係先にもご同行し、解決に向けて建設的なお話合いを重ね、差押え解除条件の引き出しに成功しております。なお、役所へ私どもが赴くのは、物件に差押えが入っている場合となります。
(※)無剰余…担保不動産の価値以上に抵当権が設定されており、担保としての価値がない状態。いわゆるオーバーローン。抵当権者以外の債権者が当該担保不動産を差押さえようとしても、基本的には裁判所が認めないとされる。しかし、無剰余を示す根拠が乏しい場合、競売が進むため注意が必要。
◆ご相談はお早めに
税金や住宅ローンの滞納が避けられなくなった際は、熟知している窓口に早期に相談をし、正確な情報収集をすることが重要です。私どもは各金融機関や役所への折衝にも実績があります。
交渉ごとは、最初が肝心です。私たちにご相談くだされば、「役所に話を向ける時は、このように申し出ればいいのだな。」というコツもつかんでいただけるでしょう。貴重な時間と資金を有効に活用するためにも、私たちの見識をご利用ください。