任意売却事例:② 不況が事業を直撃し、返済不能状態に
不況が事業を直撃し、返済不能状態に。
事業を運営している方にとって、日本政策金融公庫は、ポピュラーな金融機関でしょう。一般の方々にとっては、「国の教育ローン」の取り扱いでご存知かもしれません。
任意売却の際、日本政策金融公庫への折衝も少なからずあります。多くは事業主が法人の個人保証をしているため、返済が行き詰まると代表者の自宅などを差押えるためです。
ご相談内容:
ご夫婦で飲食店を営むYさん。お店の経営が順調だった頃、事業拡大を目論みました。近所にちょうどいいテナントが空いたのをきっかけに移転。その際、日本政策金融公庫より、改装費などを含む当面の運転資金を借入れました。もちろん、Yさんは個人保証しています。
当初の数年はこの目論見は大当たりで、順調でした。しかし、一番ご贔屓が多かった近くの工場が閉鎖となり、事態は一転しました。ほどなく返済することができなくなり、自宅が差押えられ、競売開始決定通知が届いたのです。
【ご相談者様プロフィール】
■職業:飲食店経営 50代
■ご家族:ご夫婦2人(子らは独立済み)
■物件:居宅(店舗とは別場所にある)
■債務…住宅ローン残高:980万+日本政策金融公庫:1100万円
■毎月の返済:21万円(合算)
《提案》自宅は任意売却、店舗は縮小へ
競売開始決定となっていたため、任意売却期間はあまり取れません。入札日が翌月に迫った時点で売却先が決定し、第一抵当である住宅ローンは完済。日本政策金融公庫へは一部返済となりました。
商売は縮小をせざるを得ず、空き店舗の多さに困っている商店街の店舗を借り、小さく再出発することになりました。
【総括】
Yさんは当初、『抵当権設定をしていない日本政策金融公庫が競売申し立てをするとは考えもしなかった。』としきりに仰っていました。
実は、日本政策金融公庫の対応は厳しい傾向にあります。口座差押えや競売申し立てもよく行っています。やはり融資の原資が税金であること理由のひとつではないでしょうか。債権者にとって、貸金の回収は責務です。不払いへの対処は、抵当権の有無に限りません。Yさんの場合、リスケ交渉や滞納の際の連絡を怠ったために、担当者の心証も芳しくありませんでした。誠意ある応対を常日頃より重ねていれば、債権者の理解を得られることがあります。結果として、売却や差押えを免れるケースもありますので、返済が不払いとなる前に連絡や相談はしておきましょう。