リースバックはやばい?デメリットや実際にあったトラブル事例と対処法


すぐに資金調達ができ、住居はそのまま賃貸として引き続き住める『リースバック』を利用する方が増えています。それに比例してリースバックを提供する会社も増えていますが、トラブルも増加傾向にあります。
この記事では、リースバック利用時のデメリットから注意すべきポイント、後悔せずに契約できるコツについて知ることができます。実際に起こったトラブルと、その対策・解決法についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
リースバックはやばい?デメリットや注意点
リースバック自体は昔からある制度なのですが、一般的にその名が広まりだしてまだ十数年しか経っていないため、「リースバックって安全なの?」と疑問に持たれる方も多いようです。
リースバックのことをインターネットで検索してみると、予測候補に「リースバック やばい」と出てくることもあります。こういったところで、リースバックに対して悪い印象があるのでしょう。
まず大前提として、リースバックは一般的な資金調達方法です。やばいと思われるような契約ではなく、実際に多くの方が利用しています。では、なぜリースバックはやばいと思われているのか、以下のような理由が考えられます。
- 仕組みをよく理解しないまま契約してしまう
- デメリットを伝えない業者がいる
- 身内に相談もなく、所有者が勝手に進めてしまう
- 不動産を安く買い叩く業者がいる
このように、親身になってくれない自分勝手な不動産会社も少なからずいるとは思います。ただ、それも利用者がちゃんとデメリットや仕組みを理解していれば解決できるとも思うので、後悔しないためにもご覧頂ければ幸いです。
考えられるリースバックのデメリット
- 市場価格よりも20%~30%ほど安い売却価格になる
- 毎月家賃を払う必要がある
- 賃貸として住める期間が定められている場合がある
- 買い戻しする場合は売値より高くなることがある
- 利益が出すぎると譲渡所得の税金を納める必要がある
リースバックで分かりやすいデメリットは、通常の売却価格よりも20%~30%ほど安くなってしまう点でしょう。それに加えて、売却と同時に賃貸契約をするため、住み続けるなら毎月決められた家賃を支払う必要があります。
また、賃貸契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。普通借家契約とは、契約更新を前提に締結する契約です。更新し続ければ、そのまま住み続けることができます。しかし、定期借家契約の場合は決められた年数が経過したら、退去しなくてはいけません。
リースバックの場合、売却した物件を買い戻すこともできます(※各社規定による)。しかし、買い戻し金額は売却金額よりも高くなることが多いです。そうしないと、リースバック会社に利益が出ないからですね。
これも意外と知られていないデメリットと言えるでしょう。
譲渡所得について
リースバック利用時に気を付けるべき税金は、「譲渡所得税」です。譲渡所得税とは、資産売却によって発生した利益に対して課税される税金のことです。リースバックには、住宅の売却が含まれているため、利益が出れば課税対象になります。
ただし、特別控除が3,000万円あるため、買ったときより3,000万円以上高く売れたら税金がかかると思ってください。3,000万円以上、利益が出る方は少ないと思いますので、基本的には譲渡所得税はかからない方がほとんどかと思います。
参考:国税庁(マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき
実際にあったトラブルの事例と対処法
ここからは、実際にリースバックを利用して起こったトラブルと、その対処法について解説していきます。
高齢者の契約トラブル
まずは、リースバックを利用した高齢者による契約トラブルです。
2024年末に公開されたNHKの記事を一部抜粋すると…
父親はマンションの部屋を不動産業者に千数百万円で売却していました。しかし相場を調べたところ、この売却額は市場価格よりおよそ1000万円安かったといいます。そして同じ部屋に住み続けるため、毎月10万円以上の家賃を支払う契約になっていました。
父親が契約書にサインしたのは、業者が最初に訪問してからわずか数日後。「判断能力が低下していた父親は複雑な不動産契約の内容を十分に理解していたのか」「業者から迫られ、家族に相談する間もなく契約させられたのではないか」そう思わざるを得なかったといいます。
さらにこの不動産業者は父親の“代理人”として実印を変更する手続きを行ったうえで、契約を結んでいました。家族に相談もなしに一気に話を進めてしまったという点では、不動産業者に押し切られてしまったのではないかと感じています。
引用:NHK
このトラブルを要約すると、以下のようなことが分かります。
- 相場よりも安くマンションを売ってしまった
- 判断能力が落ちている高齢者と知っていたのではないか
- 家族への相談もさせないようにしていた
- 実印変更など判断能力の低下を利用した悪質行為
消費生活センターによると、リースバックの契約トラブルは増加傾向にあるようです。相談件数は2021年度が40件、2022年度が53件だったのに対して、2023年度には113件にもなっています。
特に一人暮らしの高齢者からの相談が多かったということでした。
【対策】高齢者は大手に相談するのが大事
高齢者トラブルの主な原因は、高齢者一人で判断してしまったという部分です。とくに一人暮らしの高齢者にとっては、なかなか相談しにくい環境になってしまうでしょう。それでも大きな資産を守るためにも、以下のようなことを実践してみてください。
①:少しでも分からないなら家族に相談する
リースバックは売却契約と賃貸契約の2つの契約を結ぶ取引です。高齢者になると、どうしても判断能力が低下してしまいますので、もし少しでも契約内容で分からない部分があれば家族や息子夫婦、親戚などに相談しましょう。自分一人で決断するのは非常に危険です。
②:代理人を用意しておく
認知症の場合、原則として本人が不動産売却することは法律で禁じられています。所有者が認知症になってしまった場合、すべての契約を代理人に任せることができる制度があります。
認知症になった後に代理人を立てる「法定代理人」と、認知症になる前に締結する「任意後見契約に基づく代理人」です。法定代理人は弁護士や司法書士が対応してくれますので、こういった契約関連でも安心して依頼することができます(原則、家族は法定代理人になれない)。
③:リースバックの依頼は大手のみにする
大手リースバック会社の場合、高齢者による契約に慎重な姿勢を取っています。例えば、ハウスドゥでは以下のようにルールを設けています。
- 70歳以上で一人暮らし、もしくは夫婦どちらかが80歳以上の場合は本人以外の同席必須
- 認知症の原因疾患を持っている場合は契約できないケースあり
- 医師の診断書を求めることもある
- クーリングオフ制度が使えないことを説明し、理解した上での契約
- 面談内容は録音し、説明と認識の齟齬を防止
- 可能な限り、家族の同席・同意のもとで契約
大手の方が運営実態もしっかりしていますし、何かトラブルになった際の解決能力も高いですよ。
きちんと説明を受けず、理解もせず契約してしまう
続いて多いトラブルが、デメリットを説明されず、そのまま契約してしまうケースです。利益を上げるためとは言え、リースバックのデメリットや悪い部分を説明しない会社は信用できません。実際に起こったトラブルを見てみましょう。
契約内容などを十分に理解せず、安い価格で売却させられたといったトラブルになるケースが増えています。国土交通省が不動産業者を対象とした初めての実態調査を行ったところ、一定の期間であれば契約を解除できる「クーリングオフ」がリースバックでは適用されないことを十分説明していない業者が全体の4割以上にのぼりました。
引用:NHK
クーリングオフ制度とは、一定期間内であれば締結した契約自体を解除できる仕組みのことです。強引な勧誘や、説明されたことと違った内容だった際に使える「消費者を守る制度」ですが、リースバックではクーリングオフ制度を使うことができません。
クーリングオフが使えないという文言は、消費者にとってはマイナスポイントですよね。だからこそ、その事実を説明しない業者も多いようです。リースバック利用者の4割以上が説明されていないことからも、それがよく分かります。
【対策】デメリットや注意点も説明してもらう
リースバックはメリットだけでなく、デメリットも多く存在しています。そのため、「リースバックは〇〇といったメリットしかない制度ですよ!」のように迫ってくるリースバック会社とは絶対に契約してはいけません。
デメリット・注意点も教えてもらうのが重要ですが、ちゃんとした会社であれば「注意点としては、〇〇といった可能性もあります。」と、会社主導で説明してくれます。
こちらから聞いて始めてデメリットや注意点を伝えてくる会社の場合、あわよくば言わずに済ませておこうと考えた可能性もあるからです。
家賃が払えなくなり、退去を命じられた
次のトラブルは、家賃滞納と退去についてのトラブルです。
所有していたマンションを売って、そのまま賃貸でそこに住み続けられる契約をした。売却金額は1千万円で、家賃の月額は9万5千円。当時の月収は、夫と私の年金で25万円以上あったが、しばらくして夫が亡くなり、年金が減って家賃の支払いが遅れるようになった。本日集金人がやってきて催促された。事情を話すと「払わないなら出て行ってもらう」と言われた。
引用:国民生活センター
この記事をまとめると…
- マンションを売ってリースバック契約をした
- 売却金額は1千万円だった
- 毎月の家賃は9万5千円で収入は25万円以上
- 収入が減ったことで家賃を滞納して退去を命じられた
リースバックは相場より家賃が高くなる可能性があるため、こういったトラブルも多く発生しています。最初は気にならなかったのに、よくよく考えると「これだと払えないのでは?」となるケースが多いようです。では、どのように対策していけば良いのでしょうか。
【対策】リースバックのリスクを知っておく
最も大事なのは、リースバックの料金面に関するリスクをあらかじめ理解しておくことです。
①:売却金額は通常の70~80%程度
最初の方にも書きましたが、リースバックの売却金額は相場の70~80%になってしまいます。相場が2,000万円であれば1,400万~1,600万円ほどです。もし相場以下で契約を進めてくる場合、すぐに契約するのはNGです。
②:家賃の相場を計算しておく
家賃相場については後ほど詳しく解説しますが、【買取金額×期待利回り(7~13%)÷12ヶ月=リースバックでの家賃】で計算することができます。これを知っておくだけでも「売却金額は相場以下なのに、家賃は相場以上」といった状況を防ぐことが可能です。
③:ずっと住み続けられる保証はない
記事は「家賃が支払えなくなって退去を命じられた」と書いていますが、家賃をちゃんと支払っていても更新や契約を打ち切られてしまう可能性はあります。酷い場合だと、家賃をグンと上げて退去せざるを得ない状態に追いやる悪徳業者もいるほどです。
賃料の合計額が数年で売却価格を超えることに後で気付いた
国民生活センターによると、リースバックで以下のようなトラブルが報告されています。
・賃料の合計額が数年で売却価格を超えることに後で気づいた
・売却価格が市場価格より著しく低額だった
引用:国民生活センター
売却金額・賃料に関するトラブルは、おそらくリースバックで最も多いトラブルでしょう。不動産売買の素人だからこそ、売却金額や賃料の相場を知っておかなくてはいけません。
【対策】リースバックの家賃相場を知っておく
相場も知らずに「毎月の家賃は〇〇円です」と伝えられると、「そんなものなのかな?」と思って契約してしまいます。そうならないようにも、リースバック会社が定めている家賃相場について知っておきましょう。
毎月の賃料は、以下のような計算式で決まることが多いです。
期待利回りは7%~13%の間で設定されることが多く、1年で多くの利益を求めている会社はパーセンテージが高くなります。7%と13%では家賃が約2倍も変わりますので、できるだけ低いパーセンテージを設定している会社がおすすめです。
では、売却金額ごとの家賃相場を見ていきましょう。
【リースバックの家賃早見表(目安)】
売却金額 | 利回り7%の場合 | 利回り10%の場合 | 利回り13%の場合 |
---|---|---|---|
500万円 | 29,166円 | 41,666円 | 54,166円 |
1,000万円 | 58,333円 | 83,333円 | 108,333円 |
1,500万円 | 87,500円 | 125,000円 | 162,500円 |
2,000万円 | 116,667円 | 166,666円 | 216,667円 |
あくまで目安となってしまいますが、何となく家賃相場が分かったと思います。もし売却金額が1,500万円で家賃を200,000円で提案してきた場合、そこの会社との契約はおすすめできません。もし不安な場合は、家賃の内訳について聞いてみると良いでしょう。
リースバックで後悔しないためのポイント4つ
ここまでリースバックのトラブルから対策まで解説してきましたが、ここからは「そもそもトラブルにならない」ために重要なポイントについて解説していきましょう。
①:相場を知るために相見積もりをする
自分の物件や土地の相場というのは、専門家でなくては分かりません。インターネットで調べたとしても、明確な回答を得ることは難しいでしょう。
複数のリースバック会社に依頼を出すことで、本当に適正な売却価格の目安がつきます。
担当者と直接やり取りすることで提案力や対応の丁寧さを実感でき、信頼できる会社を選ぶ判断材料にもなるでしょう。
さらに、「他社ではこの価格でした」と伝えれば業者間にほどよい競争が生まれ、より良い条件を引き出しやすくなりますし、細かな条件面も比較検討できるため、結果的に自分にとって有利な売却が実現しやすくなるのです。
②:なるべく資金豊富な大手企業に依頼する
大手は、クリーンな営業をすること以外にも資金力という強みがあります。資金力があるということは、それだけ売却額にも反映されますし、家賃も相場より安くしてくれる可能性があります。契約完了までスムーズに進むでしょう。
逆に資金力が乏しい中小企業の場合、最も怖いのは「資金繰りが厳しくなったら勝手に物件を他社に売ってしまう」というリスクがある点です。つまり、物件の所有者が変わります。所有者が変わることで、リースバック利用者には以下のようなリスクが考えられます。
・家賃アップを要求される
・賃貸契約を更新しないと言われる
・最悪な場合、すぐに退去してほしいと伝えられる
こういったことが起こると、新しいトラブルの火種になってしまいます。事前にリスク回避できるように、できるだけ大手リースバック会社に依頼するようにしましょう。
③:契約内容を理解して契約する
リースバックを利用する際には、契約する前に契約内容を理解する必要があります。契約後に理解しても意味がありません。
契約内容すべてを理解する必要がありますが、とくに重要な内容としては以下のようなものがあります。
確認項目 | 理解すべきポイント |
---|---|
売却金額 | リースバックの売却額は、「相場×70~80%」で設定されていることが多いです。相場が1,000万円であれば、700~800万円ほど。もしこの相場からかけ離れている場合は契約しないようにしましょう。 |
毎月の家賃 | 家賃は賃貸借契約期間内、しっかりと支払える価格なのか確認しましょう。 |
賃貸借契約 | リースバックの賃貸借契約には「定期借家契約」と「普通借家契約」があり、前者は契約期間後は基本的には退去、後者は契約更新することになります。長期的に住みたい場合は、必ず普通借家契約に対応しているか確認しておきましょう。 |
買い戻し | リースバックで売却した物件は、買い戻せる可能性があります。そのため、将来的に買い戻したいなら買い戻しが可能な契約なのか確認しておきましょう。買い戻す際には売却金額よりも高くなることも頭に入れておくと良いです。 |
その他 | 各種手数料や税金に関する内容も確認しておきましょう。とくに税金関係は難しい部分も多いので、高齢者は家族や親戚などに要相談です。 |
もし何か分からないこと、不安なことがあれば契約せず、分かるまでスタッフに説明してもらいましょう。不安な方は、家族や息子夫婦などと一緒に店舗へ行って聞いてもらうのもおすすめです。
④:家賃が支払えるか慎重に検討する
リースバックでは物件の売却後、そのまま賃貸借契約を行います。その際に、リースバック会社から家賃を提案されますが、その家賃は適切な価格なのか、そして本当に支払える金額なのか慎重に検討してみましょう。
極端な例ですが、売却金額が1,000万円で家賃が20万だった場合、1年で240万円も支払わないといけません。約4年で売却した分がすべて消えてしまいます。これではリースバックを利用した意味がほとんどありませんよね。
逆に、家賃が7万円だった場合、1年で84万円が支払金額です。10年は住み続けられますし、どこかのタイミングで買い戻せるかもしれません。このように、売却金額と家賃が見合っているのか確認してから契約に進みましょう。
リースバックはこんな人におすすめのサービスです
今回の記事をまとめると、以下のような方にリースバックをおすすめしたいです。
- すぐにでもまとまった現金が欲しい方
- 慣れ親しんだ家にそのまま住み続けたい方
- 将来的に買い戻しを検討している方
- 家族や親戚に相談できる環境の高齢者
リースバックのメリットは、売却までの流れがスピーディーで、すぐにでもまとまった現金を手に入れられる点です。
現金化までのスピードは会社によって異なりますが、相談から最短5日~1週間ほどで現金化に対応している会社もあります。
そして、そのまま賃貸借契約して同じ家に住み続けられるのもリースバックの強みです。定期借家契約か普通借家契約かで契約年数も異なりますが、長期的に住むこともできます。ただし、家賃は相場よりも高くなりがちなので、そういった計算をしっかりとしておきましょう。
高齢者にとっても相続対策などに活用できますし、高齢者を対象としたお得サポートを提供している会社もあります。そのため高齢者にもおすすめなのですが、「周りに相談できる環境の高齢者」が好ましいです。
おすすめのリースバック会社については【全国版】リースバックに対応できる大手不動産おすすめランキング3選でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。